- 久遠の絆 再臨詔
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「千年前から好きだった」
なんだか書評じゃなくてだんだん30代オタクのレゲーレビューみたいになってしまったが・・・GWということで大目に見てもらいたいです(笑)。ちなみに冒頭の言はメーカがつけたキャッチコピーですが、Google先生に聞いても 、アクエリオンにやられてまったく検索上位に挙がってきません。
今日ご紹介したいのは「久遠の絆」という、1998年に発売されたノベルゲームです。ジャンルは「シネマティック・ノベル」です。オリジナル版は現在はすでに廃版となっており、「再臨詔」としてリメイクされています。
1995年に発売された「弟切草」「かまいたちの夜」などを皮切りに、ゲーム業界に「ノベル」というジャンルが開拓されました。(おそらく)シナリオと音楽だけあれば、比較的容易に参入できることから、当時あまたのメーカーがコンシューマ/PCを問わず参加したと記憶しています。有名なところでは、18禁ゲーム業界でLeafやアリスソフトといった代表的なメーカが、それぞれ「To Heart」(1997年)、「Atlach=Nacha」(1997年)等を相次いで発売するなどしており、このジャンルは当時相当数のゲームがしのぎを削る、まさに百花繚乱といった感じでした。
(「To Heart」については、ノベルではなくアドベンチャー、ビジュアルノベルという意見もあるかと思いますが、おそらくそれほど厳密に議論されるほどのものでもないので、ここではとりあえずテキストを読んで選択肢を選ぶ形式のものを「ノベル」形式と総称することにします)
平安時代に落ちこぼれ陰陽師として剣にうつつを抜かす主人公、安倍鷹久は、帝の愛人(?)である螢と恋に落ちてしまい、そこから始まる因縁の業。平安の世から元禄の江戸、そして幕末、現代と、業とともに愛も輪廻する・・・とでも書いておけばいいだろうか? 正直、昔過ぎてはっきりと覚えていないのですが、とにかく、やたらと長かった記憶があります。また、開発陣がおそらくまだ手探りだったのでしょう、ロード時間と文字の描画時間も長く、ほぼ同時期に発売された「To Heart」PS版に比べて操作感は最悪でした。おそらく「To Heart」を先にプレイしていたら、これはやりきれなかったでしょう。また、誤字も非常に多く、まさに「駆け出し」感丸出しでした。とはいえ、グラフィックは当時の水準を考えてもかなり美しく、音楽も雰囲気に合った非常に優美なものでした。総合的には、かなりいい線いっていたと思います。
ところで、こうして過去を振り返ってみると、サブカル(というより、物語全般に言えることだが)というのはほとんど過去の作品と似通ったモチーフにならざるを得ないのだという事実に、改めて気付かされます。おそらく、プロの作家はこうしたことを前提に、いかに真新しさを出すか、新鮮さを出すかというのに苦心しているのではないでしょうか。わたしは小説をほとんど読まないのですが、かつて読んだ大塚英志「キャラクター小説の作り方」などを読むと、そんな気にさせられるのです。プロ作家の心労やいかに。
- キャラクター小説の作り方 (角川文庫)/大塚 英志
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(わたしが購入したのは、講談社現代新書版ですが、アマゾンのアフィリエイト検索で出てこないようです)
さらに余談は続きますが、「陰陽師」のように、もともとのフリークスがひっそりと愛していたネタを、一般受けするマーケティングに使われるようになったとき、もとからの愛好者はきっと複雑な気持ちになるんでしょうね。たとえば「指輪物語」とか、「クトゥルフ神話」とか、そういうもの当てはまるような気がします。個人的には、メジャーになったことで、多くの人に知ってもらえるのは、非常にいいことだと思っています。大衆化によって、本来の細かい解釈や厳密な語義等が誤解される確率は高くなりますが、それは、分母が大きくなれば致し方のないことでしょう。元からのフリークスは、これまで通り、重箱の隅をつつくような細かい解釈を、同好の志が集うコミュニティで楽しめばいいのではないでしょうか。
なお音楽を担当されていた風水嵯峨さんは、残念ながらお亡くなりになられたようです。ご冥福をお祈りしたいと思います。