現在、基本的には財政難が嘆かれるチームの多いサッカー界だが、それでも数少ない金満チームは存在する。2シーズン前より施行が開始されたファイナンシャルフェアプレーにより、オーナーの出資が禁止され、移籍市場における圧倒的な金満クラブは今後減少するだろうが、17-18シーズンまでは寄付による赤字の穴埋めが認められている現状を考えれば、まだしばらくはサッカー界に金満クラブが存在し続けるだろう。FFPの是非についてはこの場で言及しないが、2013年夏季市場でも多くの金銭が動き、選手も多く動いた。世界的にもオーナーが資産家として有名なクラブは、ロマン・アブラモビッチ会長が2003年に買収したチェルシー、2008年にUAEの投資グループがオーナー権を買収したマンチェスター・シティ、カタール投資庁の子会社QSIが2012年に単独株主となり、タミーム皇太子の友人でもあるナーセル・アル=ヘラフィー氏が会長に就任したパリ・サンジェルマンなどがある。しかしそんな裕福なクラブを差し置いて、今夏移籍市場最高である約220億円とも言われる大金を叩き、選手を補強したクラブが存在する。それが2011年にロシアの実業家ドミトリー・リビリフレフが会長に就任し、今季リーグ2より1部に復帰したクラブ、ASモナコだ。約72億円とも言われる移籍金で獲得したCFラファエル・ファルカオをはじめ、フランス代表の守備職人ジェレミー・トゥララン、更にディフェンスラインにはリカルド・カルバーニョ、エリック・アビダルという百戦錬磨のベテランを補強した。そんなクラブが今季よりチームの心臓として期待する選手は、約32億という移籍金でポルトより加入した。それがポルトガル本土最南端のファーロ出身のポルトガル代表、ジョアン・モウチーニョだ。
スポーツ一家の3男として生まれたモウチーニョは、14歳より名門スポルティング・リスボンの下部組織で育った。当時より才能を認められていた彼は、17歳でトップチームに招集される。トップチームデビューまでには半年ほどの時を要したが、ジュニアチームではミゲウ・ヴェローゾ、ルイス・ナニらとともに全国制覇を成し遂げた。その後チームの中心として成長した彼は、2010年夏にライバルチームFCポルトへと移籍。移籍初年度よりチームの中心として約60試合に出場した彼は、ポルトのスーペル・リーガ独走優勝に大きく貢献した。2012年には恩師アンドレ・ビラス・ボラス監督率いるトッテナムへの移籍が破綻に終わり、今季のモナコ移籍へと至った。
モウチーニョは主戦場を中央とし、CMFやOMFを主に務める司令塔だ。卓越したボールコントロール能力を有し、突破力が抜群にあるというよりは、密集地帯を苦にしないタイプのドリブル技術を持つ。ハードワークも売りのひとつとし、攻守においての活躍が計算できる現代的な司令塔だ。フィジカル能力こそ高くはないが、中盤でパスを捌きながら自らもフィニッシュに絡むことができる。ポゼッションのみではなく、カウンターサッカーにより力を発揮するタイプであり、労を惜しまないオーバーラップから、スピードを上げても落ちることのない技術力を武器にしたドリブル能力、パス能力、そして決定力と、全ての引き出しを高レベルで体現することができる。またケガが少なく、戦力としてフルシーズン計算できることも大きなストロングポイントだろう。
2011年より金満クラブの仲間入りをし、今夏の移籍市場では史上稀に見るような大盤振る舞いを披露したクラブ、ASモナコ。今季より1部に昇格したチームであるが、陣容は既にリーグトップクラスだ。そのモナコにあり、チームの舵取りを大きく任されている選手、それがジョアン・モウチーニョだ。近年中の躍進を胸にチームを作り上げるチームにあり、彼に課せられる役割は事のほか大きい。彼がチームを引っ張り、新加入選手で継ぎ接ぎのチームを繋ぎ合わせ、まとめあげることができるかが、今季のASモナコ躍進のキーポイントとなるだろう。