Netflixで配信中の韓国ドラマ『ドクタースランプ』で、視聴者の心をわしづかみにしたパク・ヒョンシク。少女マンガから出てきたような麗しいルックスに抜群のスタイル、純度100パーセントの素直な感性と人懐っこさ、ふいに見せる憂いの表情……と、愛されずにはいられないキャラクターで“ロマンティックコメディの貴公子”と呼ばれているのも納得だ。
男性アイドルグループZE:A(ゼア)のメンバーとしてデビューし、俳優としても孤高の王の愛を演じた『花郎<ファラン>』や、変わり者のツンデレCEOに扮した『力の強い女 ト・ボンスン』などで実力を発揮。“カッコいい”から“可愛い”までの引き出しの広さと、気品のなかににじみ出る性格のよさで、人の懐にするりと入り込んでしまう天性の“愛され”キャラを形作るものとは?
――最新作『ドクタースランプ』は、ヒョンシクさんの魅力が存分に発揮された作品でした。ヨ・ジョンウという役を演じてみて、手応えはどうですか。
やりたかったこと、お見せしたかったものは100パーセント注ぎ込めたと思っています。おそらく、性格的にロマンティックコメディというジャンルと相性がいいんだろうなと。それに、台本を読みながら、脚本家の先生は僕のことを十分にわかったうえで書いてくださっているんだなと感じました。僕が得意なこと、持っているものをたくさん引き出そうとしてくださったようです。それらが相乗効果となって、ヨ・ジョンウというキャラクターが生きたんじゃないかと思います。
――アドリブもたくさんあったのでは?
はい、多かったですね。高校時代のシーンでいえば、台本には「ジョンウ、試験の順位を見て衝撃を受けて倒れる」というように簡単にしか書かれていないんです。それで、監督と話をしたり、リハーサルでいろいろ試しながら、その“衝撃”を最大限、表現できないか考えました。表情だったり、倒れ方だったり……。そういったト書き部分を膨らませるためのアドリブはずいぶんやりました。
――爆笑しながら見ていました(笑)
よかったぁ!(笑)
――ジョンウは明るくポジティブに見える一方で、実は心の傷を隠し持っていました。笑える部分だけでなく、そういった影の部分の表現がとても印象的だったのですが、演じるうえで意識したことはありますか?
その部分については、監督とたくさん話しました。明るくて順風満帆に生きているようですが、大きな事件に巻き込まれたことにより、彼のなかのシリアスな部分が浮き上がってきます。そうなると、光と影のギャップが大きくなりすぎてしまうのではないか、中間はないのか、特にスランプ状態の表現には悩みました。そんなとき、監督がこうおっしゃったんです。「ジョンウというキャラクターは、自分自身を愛して守ることができる。それに、想像以上に強く、しっかりした人物だ。なので、自分がつらいときもそれを他人に見せるのではなく、人のことを先に考える。そういった大きな器を持っている男だ」と。それを聞いたときは、そんな人はいるだろうかと思いました。でも、ジョンウを演じていくなかでわかったんです。表面ではすごく明るくて、よくふざけたりしますが、誰よりも大人っぽく成熟した面を持っているのがジョンウではないかと。ジョンウを通して多くのことを学びました。
――そんなジョンウがすごくヒョンシクさんに重なるなと思いながら見ていました。自分自身を愛することもできるし、他人を愛することもできる。
ありがとうございます(照)。確かにそうですね。僕自身も“自分を愛すること”をとても重要だと思っているんです。自分を愛することができてはじめて、周りを思いやることができると思うので。そういったところが似ているのかなと思いますね。
――このドラマは、傷ついた大人たちのある種の“青春ストーリー”のようにも感じました。ヒョンシクさんご自身が思う青春ってどんなものですか?
十分に失敗をしても大丈夫なとき。ずっと挑戦し続けられる、そのときを“青春”と呼ぶんだと思います。
――今は?
今も!(笑) 青春です!
――失敗は怖がらないタイプですね。
はい。僕は挑戦することが大好きなんです。なんでもトライしてみたい。なので、本当にあれこれ、食べ物でも食べていないものを食べてみたいし、行ったことのない国や場所があると、行きたくなって体も心もむずむずします。ただ行くだけじゃなく、そういったところでは探検をしたいと思うタイプです。
――やはり、ジョンウと似ているようですね。ほかにこれまでの演技人生でターニングポイントになった作品はありますか。
大前提として、自分が出演したすべての作品に対して愛情を持っています。そのうえで、ターニングポイントだったと言えるのは、一般の方々にとっては『力の強い女 ト・ボンスン』なのかなと思います。この作品でみなさんに知っていただけるようになりましたから。でも、僕自身は『家族なのにどうして〜ボクらの恋日記〜』だと思っています。全53話という長編ドラマですが、父親役のユ・ドングン先輩をはじめ素晴らしい先輩たちと一緒に仕事をしながら、多くのことを学び、成長することができました。俳優としてまさに転機で、土台になった作品です。このときの経験や感動が、『力の強い女 ト・ボンスン』や今回の『ドクタースランプ』にもつながっている気がします。
――これは本当に名作でした。
僕自身、演じながらたくさん涙を流しましたし、感動もしました。家族についてもう一度考えるようになった作品でもあります。
――ヒョンシクさんといえば、ドラマだけでなく、音楽活動やミュージカル俳優としての活動も気になります。
音楽もそうですし、ミュージカルもまたやりたいです。特にミュージカルは、長い間準備を経て舞台に立ったときの、生で観客のみなさんと一緒に呼吸をする感じ、そこで沸き起こる感情は言葉では表現することができないくらいシビれます。
――先日のファンミーティングでは、ファンからのリクエストで『エリザベート』の「闇が広がる」の一節を歌われましたよね。その瞬間、トート役が舞い降りてきたように感じました。
歌も演技もそうですが、感情から入っていくタイプです。先日も『エリザベート』の歌を歌った瞬間、自分のなかにあるトートの感情が戻ってきて、歌詞がぱっと浮かんできました。それで、スイッチがオンになったように見えたのかもしれません。撮影のときも「キュー」という声がかかった瞬間、役の感情が入ってくる感じですね。
――オンとオフの切り替えはできるタイプですか?
撮影現場やステージなど、集中しなくてはいけないとき、役をお見せする瞬間は、全神経集中してのめり込みます。そして撮影が終わるや、自分に戻ります(笑)。
――『ドクタースランプ』では、ハヌルが寝る間も惜しんで一所懸命勉強するガリ勉タイプで、ジョンウはあまり努力を見せずにいい成績をとる天才タイプでしたが、ヒョンシクさんはいまの話を聞くとジョンウが近い?
僕は……天才ではないですけれど、かといってハヌルのように勉強だけ、仕事だけというタイプではない。常にベストを尽くす、そんなタイプです。
――今回、ビーグルの子犬と一緒に撮影をしていただきましたが、ヒョンシクさんも「愛くるしい子犬のよう」と言われています。ご自分でもそう思いますか?
僕自身はそんなふうに思っているわけじゃないんですが、本当にたくさんの人に「犬みたいだね」と言われるんです(笑)。考えてみたら、僕は家族でも末っ子ですし、ZE:Aでデビューしたときも末っ子でした。長い間末っ子のポジションにいたので、自然に人懐っこさが出てきたのかもしれません。
――4月には日本ファンクラブ発足を記念したファンミーティングも決まりました。今後日本でも本格的に活動していきますが、日本でやってみたいことはありますか?
日本の作品に出てみたいですね。そのような機会があればいいなと思っていますし、アルバムも出したいです。
――日本の作品で好きなものはありますか?
もちろん、たくさんあります! 映画『今夜、世界からこの恋が消えても』は飛行機のなかで観ながらわんわん泣きました(笑)。アニメも大好きです。とくに『るろうに剣心』! 僕自身が剣道をやっていたので、実写映画も観ました。アクションシーンも細部までしっかり観たんですが、本当に素晴らしくて、僕もやってみたいと思いました。それと『孤独のグルメ』も好きです。食べ歩きが描かれているだけなのに、とても面白くておいしそうに感じます。シンプルで物静かでも、感性が細やかで豊かですよね。
――そんなヒョンシクさんを日本の作品で見られる日を楽しみにしています。
ありがとうございます。頑張ります!