NEOS。 アコウクロ -5ページ目

「White snow」 第二章 -虹ー 3

幸人は公園にたどり着いた


『ここだと思うんだけどな・・・』


家を出るころに降っていた雪は風と共に量が増していた、幸人はコンクリートの門を抜け小高い上り坂を登り公園全体を見渡した

見る限り人の気配は感じない・・・まさかと思うがこの雪の中に寝転がってるわけではないだろうな・・・

そう思い雪野原を歩き出した


『ひとみ-!ひとみ-!』


名前を呼んでも答える気配はまるでなく雪にかき消されるように虚しく響いた・・・


『あいつ・・何処に行きやがったんだ・・・』


公園を一周した・・・


『ここじゃなければ・・何処なんだ・・・学校か・・?親父の墓か・・・』


公園には居ない、そう思い出口へ向かおうとしたときに夜景が目に入り込んだ・・・


「夜景か・・しばらく見に来たことが無かっ・・・展望台・・もしかしたら・・」


幸人はふと思い出した事から展望台へ向かった、あそこなら雪はしのげる、夜景が好きで小さな頃からひとみは展望台へ行きたがったことを思い出した


急いで駆け付け展望台の入口へ立った・・


『ひとみ・・・』


ひとみは展望台にもたれ掛けていた・・・


近くに行き声を掛けても返答する事はなかった、嫌な予感がした・・・


「まさか・・こいつ・・」


『おい!ひとみ!』


幸人はひとみの肩を掴んで体を揺さぶった


『・・・ん・・誰・・・』


『ひとみ!』


ひとみは自分が今何処で何をしていたかが理解できていなかった


『お前、こんな所で寝てたりしたら死んでしまうぞ!』


「そっか・・私・・公園で・・・」


『・・・死んでもいいもん・・・』


小さな声で呟いた・・・


「馬鹿野郎・・・」


ひとみの頬をぶちたかった・・・だが、今ここでそんな事をしてもひとみには伝わらない・・・

彼女の気持ちを工面するんだ・・兄として・・父親として・・・

親父ならどう声を掛けるんだろう・・・


『・・・家族が心配している帰ろう。ひとみ・・・』


怒りをこらえ幸人はひとみに優しい言葉を掛けた・・・


『・・・ぅん・・・』


幸人は持ってきたジャンバーをひとみの肩に掛けた


『ありがとう・・・』


二人は展望台を出た


『なぁ、ひとみ、父さんと会えたか?』


『会えなかった・・(苦笑)・・でも、何となく傍にいてくれたような気がした』


『そうか、良かったな・・・。』


二人は公園にある自販機で暖かいコーヒーを買った


『お兄ちゃん・・・怒ってないの・・』


幸人はひとみに顔を向けることなく言った


『お前が無事で良かった、その気持ちでいっぱいだよ・・・』


『ごめんなさい・・』


『ほら、行くぞ』


兄の背中が大きく見えた・・・

今までの背中ではなかった、何か包み込まれるようなものを感じた・・・


『うん・・』


幸人はひとみが無事だったことを電話で知らせていた、二人は家に着くまでとくに話をしなかった

お互いがどう声を掛けていいかわからなかった・・・


家に着くと直ぐに母親がひとみに抱き着いてきた、亜衣(姉)も涙を浮かべていた

そこで初めてひとみは自分が掛けた心配の大きさを感じた


『家族に心配かけてごめんなさい・・・』


『本当だよ、皆の気持ちも考えろよ・・』


幸人が言った


『はい・・』


「部屋に引きこもり顔も見せることもなく声を聞かせることもなかったひとみが、今こうして家族の前に居て話をしている・・・こういう事が大事なんだろう・・父さん・・」


幸人はそう思い家族を見た・・・


家族四人久々に揃い顔を見あわせた、複雑な思いの中 和やかな空気が流れていた


『ひとみ・・悲しいのあなただけじゃない、こういう時こそ家族で力を合わせと駄目よ』


母がひとみにそう言い再び抱きしめていた


『うん・・ありがとう・・・』


ひとみは母親の胸に縋りつき泣いていた・・


色々な話をしながら、家族は落ち着き始めた、話題はそのうち今回のひとみの事から父親の思い出の話へと移った・・・


母は父と知り合った時のことなど涙を浮かべて話していた、そして子宝に恵まれた事に感謝している事を伝えた。

姉は兄弟三人でいつも楽しく過ごしていたことや旅行の事、その時の父の言葉など思い出しては話をしていた

幸人はただそれを聞いていた・・・


そんな中、ひとみがふとした疑問をぶつけてきた


『お父さん、死ぬ間際まで・・ひとみの体の事を心配していた・・そしてどう生きていくか・・って・・どういう事かな・・』


それは何気ない質問だった・・・


『それは・・父親として当然なんじゃないか・・お前が最後まで一緒に居たんだからさ・・』


幸人の言葉の発し方に何か疑念をひとみは感じた


『あのさ・・・私の病気の事なんだけど・・・』


家族の顔が少し強張ったような気がした・・


『もしかしてさ・・私、お父さんと同じ病気なんじゃないの・・・だから、お父さん私の体の事をいつまでも気にしていたんじゃ・・・』


『・・・ひとみ・・違うわ・・お父さんは体の弱いひとみをずっと心配して・・』


母親がそう言った、亜衣は一言も発することなく母の顔を見ていた


『やっぱり・・そうなんだ・・・』


『・・・』


『ちゃんと教えてよ!ひとみお父さんと約束したの!ちゃんと生きるって!これからどう生きていくかって!』

『ねえ、お兄ちゃん教えてよ!』


幸人は重い口をひらいた・・・



『父さん、お前に何も言わなかったか?』



『言える状態じゃなかったでしょ!』



ようやく家族が一致団結出来そうなときにこうしてまた壊れ始めるのか・・・

本当の事を伝えるべきではないか・・そのうえで家族で共に力を合わせるべきではないのか・・・



『お前の病気は父さんのとは違うよ・・・』


『嘘っ!そうやって誤魔化したってわかるんだから』


『嘘じゃない、本当だ。お前は小さい頃から体が弱くて入退院を何度も繰り返しながら父さんと通院してたよな・・』


『うん・・』


『いつも採血される時、恐がって泣いて大変だった・・・小さな腕に注射針の痕が残る姿を俺も何度も見てきている・・・』


『・・・』


『辞めなさい幸人!』


母は幸人が病気を継げることを懸念し大きな声を出した


『お母さんは黙ってて!私は知らないといけないの!』


『・・・本当に知りたいのか?・・聞いたうえでお前は父さんとの約束を守るんだな?』


『・・・ぅん・・・』


下唇を噛みしめながら頷くひとみ・・・


幸人は迷いながらもひとみに病気を伝えようと思った・・・





「父さん・・・本当にこれでいいのかい・・・・」