2016年、ステージ4にさしかかっていた胃の全摘手術前まで耳にしていたヘンデルのハープシコード組曲
5年ぶり再聴してふたたびとりつかれることに
キューブリックのバリーリンドンの冒頭メインテーマ音楽が印象深いサラバンドHWV437(オーケストラ版)
ウィルヘルム・ケンプ編曲メヌエットHWV434(ピアノ版)
単独ピックアップされて演奏される頻度も高い有名な2曲だが
その2曲以上にHWV428ニ短調の前奏曲、アレグロ、10分弱にわたるアリアはまさにヘンデルの名を不滅にするチェンバロ原曲のためのチェンバ楽曲の最高峰と言っても差し支えない
バッハの平均律、イギリス組曲、フランス組曲、ゴールドベルク他オルガン作品の数々の求道的、抽象的音響世界はともすれば
現代ピアノのトランスクリプションヴァージョンで聴いたほうがオリジナル以上の真実がこちらに伝わってくるケースが多々感ぜらるるものの
グレン・グールド、アンドラーシュ・シフ、マレイ・ペライア、ブーニン、ヒューイットが残した歴史遺産としての録音群がそれを証明しているのは周知の事実だ
当該ヘンデル楽曲にはチェンバロにしか到底出しえないデリケートな独自の感興を呼ぶ音響傾向が確実にある。
特に短調作品ーHWV428、HWV429、HWV431、HWV432、HWV433、HWV437、HWV438、HWV439
その旋律の数々とまさに心中してしまいたくなるような哀切感はどうしたものか?
王宮の花火、水上の音楽、メサイアのアレルヤで後世に残った賑やかしいある意味騒々しいお祭りパロック音楽の担い手としての顔の印象しかなかったが
ひさしぶり繰り返し々この孤高のハープシコード金属音を浴びていると何かクラシック音楽鑑賞の無限の幅の広さを痛感させられる音宇宙に打ちのめされるばかりだ。
かつてヘルムート・ヴァルヒャ並びにグスタフ・レオンハルトのバッハを皮切りにバード、ギボンズ、ブルのイギリスヴァージナル音楽を中心としてルージイチコヴァやアンソニー・ニューマン/ウォルシンガム変奏曲のチェンバロの音色に学生の頃のめりこんだ時期もあるにはあったが
あれから半世紀、五十年弱の時が流れ
バッハの鍵盤作品を経てこのヘンデルの組曲があり
ハイドンのシンフォニー「ロンドンセット」が、モーツァルトピアノコンチェルト群が、シューリヒトが振るベートーヴェンの第九が、シューベルトの合唱曲、歌曲群が、ブラームスの室内楽が、朝比奈が振るブルックナーの5番が
オーマンディ、ドラティが振るチャイコフスキーのバレエ音楽「眠りの森の美女」が
尽きせぬ連続するクラシック音楽の小宇宙の群れ
上記上から3ヴァージョンはハープシコード原曲版
ブリリアント/オランダ系ドイツ人ボルグステーデ4CD、ナクソス/米国カクストン盤
その下4バージョンはピアノトランスクリプションヴァージョン
ウゴルスカヤはウゴルスキの娘ーウゴルスカヤ2019年癌で早逝とある
ピアノ・トランスクリプションバージョンはキースジャレット演奏の録音なども含め結構バラエティに富んでる数が
ピアノバージョンの最大の利点は屹立とした時間を刻む宇宙感はチェンバロに比して圧倒的に減じられてしまうがモノトーンな柔らかさに包まれて
家内との心理的葛藤に明け暮れる心労困憊の心に、耳に優しく染み入ってくる
ピアノソロは家人とのクルマの同乗の際、要らぬ抵抗、拒絶反応を呼ばなくてすむ
わたしの病んだ心の処方箋にバッハに加えて一層の効果をもたらすとも感じられる
続々とAmazonからHyperion 2セットが届く
英国籍PAUL NOCHOLSONが弾くヘンデル/ハープシコード原曲盤と装丁が美しいアンジェラ・ヒューイットのピアノトランスクリプションヴァージョンのバッハ/イギリス組曲
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