少し寒さの緩んだ1月のとある日曜日。
私は田園都市線に乗っていました。
郊外から都心に向かう上り電車。
時間は夜7時頃。
横浜市と世田谷区が隣り合う辺りのA 駅で電車はドアを開けたまま、しばらく停車していました。
私は空きの目立つ通勤シートの真ん中に座って、ぼんやりホームを行き交う人を眺めていました。
ふと、女の人の姿が目に入りました。
その人はポンポン飾りのついたグレーの毛糸の帽子をかぶって、リズミカルに軽く弾んでいます。
全体にグレーでまとめた冬の服装ですが、カジュアルでおしゃれな感じ。
表情がとてもチャーミングな30代くらいの女性です。
その笑顔の視線は、ちょっと下向き加減。
人影に隠れて見えないけれど、きっと小さなお子さんと一緒なのでしょう。
人影が動いて、あ、見えました。
視線の先には男の子が。
5~6才でしょうか。
帽子の女性とおんなじリズムで弾んでいます。
たぶん親子なのでしょう。
でも、なんでしょうね。
ほんの少しだけ、駅でよく見かける母子の様子と違っていたのは、二人が何となく友達同士みたいに楽しそうだったことです。
ママのちょっといたずらっぽい表情は、まるで友達か彼氏と一緒にいるみたいな感じ。
それが、とても素敵で。
どうやら二人はポンポンと交互にひざを叩いて、ダンスの振り付けを練習しているようでした。
男の子はパパ似なのか、美形のママにはあまり似ていなくて、“ザ・男”風な感じだったのがまた微笑ましく。
二人の姿は、電車の窓枠に切り取られて、まるで映画のフィルムの1コマのように見えました。
電車が走り始めると、フィルムのコマは動きだして、二人の姿は私の視界から消えていきました。
こんなちょっとした1コマに、こんなに心が動くのはなぜだろう。
そんなことを感じながら、私は向かい側の窓をまだ見つめ続けていました。
何気なさの隣にある、例えようもない愛おしさ。
たぶん、つかもうとすれば脆くて、儚くて、壊れやすく、でも、永遠にそこにあって欲しいと思う、ほんのひととき。
最近めっきり涙腺が弱くなっている私は、そのかけがえなさに胸いっぱいになりながら、電車に揺られて都心の喧騒に向かいました。
こんな気持ちを、いつか歌にしよう。
そんな風に思いながら。