今日で入院八日目かあ。
もう、こちらはいいって言っているのに、各科の看護士長、全体の看護部長などが、私のところに訪れては話していく。
こちらも、
「そうですね、じゃあ入院費、割引してくれますか?」とか
「虐待監視員として、時給二千円くらいでどうですか?」とか
「病院食、赤坂の料亭の懐石にしてもらえますか?」と、ぼちぼち返しのネタも尽きてきた。
どうして、「ご指導ありがとうございます」なんて繰り返すんだろう。
「そんな立場じゃないし、虐待とかに関して、どうしたら真剣に伝わるか、魂ごとぶつけただけなんですけど」なんて言ったのが、さらに良くなかったのか、「いろいろと心に響きます」と言われる……
まあ、いいや、と思いつつ、今日は担当の療法士の方がお休みで、個人リハビリのみ。
お昼過ぎに、腎臓内科のドクターが、続いて、2時半過ぎに、血液内科のドクターが来て、最終確定の検査を行った。
検体検出は、六人部屋の病室で……
おいおい……
こちら、まだ腎臓内科の病室だぜ。
同室では、ひとつ空きベッドがあり、私以外は高齢者だけれど、うち二人は私が話しかけているうちにしだいにいろんなことを語ってくれるようになり、病室を出たり入ったりする度に「いってらっしゃい」「お帰りなさい」と言っていると、こちらが声をかける前に「いってきます」「ただいま」なんて言ってくれるようになった。
若い頃の話や、町会長をやっている話などをうれしそうにしてくれると、こちらもうれしくなる。
そんな中での検査。
「大きな声出しますから、ごめんね」と私が叫んでから、ドクターが私の腰を標的に。
「アルコール消毒、大丈夫ですね?」に、お決まりの「週に二回、ビールを少々」
「今、消毒しましたから、手を出さないで、さわったらやり直しですよ」には、「女にしか手は出しません」
チキショー、看護士にはウケないみたいだ。
「暴れないでね」には、
「体育館までは走れそうだけど、帰りは救急車をお願いします」
痛くて堪らないけれど。
30分ほどで終わり。
事前にドクターが、「抜歯するくらいの痛みだと思っていて」と言っていたけれど、終わってから、
「先生は名医だ。コトーですか? 言葉半分に聞いていたんだけれど」と言うと、
「医者なんてみんな嘘つきですから」とドクターにっこり……
やれやれ、それが看護士にはいちばんウケていたんじゃないの?
そんなあ……
本当は、心にそんな余裕はないです。
術前に「余裕で怖いんですけど」と言ったのが、私の本音……
もちろん、これからのことだって、怖いし、不安だけれど……
怖がる自分を笑い飛ばして、終わってから全てが笑い話のネタになると、いいなあ……
どうか、お願い……