脱衣所を掃除していて洗濯機のアースに引っかけてしまい外れたので、なじみの業者さんを呼んだ。

外れたのを付ければいいだけのことだったのだが、そんなこともわからず呼びつけてしまった私は、業者さんにひたすら謝った。

 

65歳になる業者さんは「仕事を続けていると、こうして来てくれてありがとうなんて言われたりして、やっぱりいいことがあるんですよね」などと聖人のようなことを言う。

 

車庫に止めてある車いすを見て、「旦那さん、車いすになったんですか?じゃもう暴れられないでしょ。良かったですね。あのままじゃ奥さん可哀想だったもの」と言う。

 

「私も1番目の妻も2番目の妻も、精神に問題を抱えていて、暴れて大変でした。今は独身です」

 

私は「私達はそういう運命を持っているのですよ。諦めるしかない」と言ったのだが、同じ運命を持つ業者さんの芯を食った言葉に、初めて「私はひとりじゃない」という思いを持った。

 

私は結婚はしているが、夫はパートナーではなく、生き延びるために戦う相手でしかなかったのだ。

私はひとりで生きていたのだ。

 

突然ジョンレノンさんがなぜオノヨーコさんに惹かれたのかわかった。

 

やっと「わかってくれる人」に出会えたのだ。