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その日の天候や気分に耳を澄ませ、鏡の前で「今日の自分」を整える時間。
かつての私にとって、装いを組み立てるひとときは、暮らしにささやかな彩りを添える静かな習慣でした。
けれど、小さくも大きな命がこの胸に飛び込み、「ママ」と私を全身で求めてくれる今、私の中の優先順位は跡形もなく、そして美しく塗り替えられました。
この手の中にあるのは、一瞬で通り過ぎてしまう奇跡のような時間です。
今しかない我が子の表情、ふとこぼれる笑顔。
その一秒たりとも見逃したくない。
脳裏の奥深くに、すべてを克明に刻み込んでおきたい。
そう心から願ったとき、朝の限られた時間の中で「どれを着ようか」と選び、迷う時間は、真っ先に引き算すべきものへと変わりました。
自分がどう見られるか。
色がどうか、素材がどうか、昨日とどう違うか。
小さき命を安全に守り抜くという役割を果たせる一着であれば、そうした関心は自ずと意味を失い、意識の外へと退いていきます。
安全と動きやすさを備えた「上下の組み合わせ」をあらかじめ定義し、ルールとしてただ静かに着回す。
選ぶ迷いを削ぎ落としたことで手に入れたのは、目の前の存在に100%の意識を注ぎ込める、澄み切った時間でした。
自分を飾るための関心を引き算した先に残ったのは、いまこの手の中にある愛おしい命を、余すことなく味わい尽くすための確かな確信です。
[PR]暮らしの余白に
服選びの時間を引き算して生まれたのは、我が子の表情や成長をただ静かに見つめる、澄み切った時間の余白です。日々の慌ただしさの中で通り過ぎてしまいそうな、ささやかで愛おしい一瞬。それを一言だけ書き留めておくための、装丁の美しい帳面。数年後にページをめくったとき、当時の記憶が鮮やかに蘇る連用日記は、手放した時間の先に手に入る、人生で最も豊かな記憶の美学です。