「礼儀というのはこうやったからこうというような指針を立ててもしようがない。
自らが考えて行動する。
私はお前には覚えさせるというようなやり方でなく吸収するというやり方があっていると思う。
まず、お前に必要なのは、翔様に従順であり、他人には礼節を持って接すること。
翔様に従い、他人からの面倒を排除して翔様至上主義なることだ。
それに当たって、今はまず粗野なその態度を改め、マナーを学び、何処に付いて行っても翔様を辱しめないようにすること」
難しい言葉がたくさん並んでいたけれど、要するにしょうさまが恥ずかしくないようにするには今の態度や行動ではダメだってこと。
このしつじさんの言う通りの動きを学んで自分の物にすることが今のわれにやること。
しょうさまに頂いたメモ帳に、
『まず、われはなにをすればいいですか?』
と書いて見せると、
「今から『われ』という言葉を使うのを止めなさい。
一人称は『わたくし』だ」
[いちにんしょう〕?
話し相手自信を指す 自称ともいう
??
「わからないかな?われ、というのはお前が自分を呼ぶときの言葉だ。名前とは違うな。
われですか?とかわれがやります、というときに使う、その『われ』は使うのを止め、『わたくし』あるいは『ぼく』という言葉を使いなさいと言っているのだよ」
しつじさんの言葉は水が染み込んでくるようにわれの頭の中に入っていく。
『わたくしに、しょうさまにはずかしくないようなれいぎをみにつけられるようよろしくおねがいいたします』
メモ帳を見せれば、大きく頷き、
「難しいことはないだろう。
お前はもう敬語を駆使できるほどの力を持っているのだから。
ただ、平仮名だらけで伝えるのではなく、漢字を使うことも覚えなさい。
あとは、翔様の後ろにつき、翔様のやることを真似、間違ったところは私が注意する。
その方法が一番良い」
『はい、よろしくおねがいいたします!』
「服装も、従者にふさわしいものにしよう。
背広は必要ないが、清潔な白いシャツとズボン、足はタイツがいいな。
清潔感のある格好をしなさい。
衣装部屋においで、いくつか選ぶから、部屋に持っていきなさい。
翔様のお小さい頃のものが調度良いだろう」
しょ、しょうさまのお洋服!
『そんな、おこがましいです。へいみんのきるようなふくでじゅうぶんです』
「そうはいかない。
翔様にご迷惑がかかる。
あんな身分も低そうな平民をお付きにつけているなんてと言われかねない。
着飾ることもマナーの1つだ」
着飾ることもマナー。
清潔感のあるってことはきれいでいること。
そっか、シワなんか考えたこともなかったけど、翔様はいつもシワ1つ無いシャツに背広を着ている。
われも気を付けなくっちゃ。
あ、ワタクシも……ボクも気を付けなくちゃ!