「ん、いいね。後は弾力包帯で固定しよう。相葉ちゃん、彼、右利きだから巻けないから、ここでやり方覚えて。
そんな難しくないし、そうだな、後1ヶ月ぐらいで大丈夫になるよ。上腕じゃなかったから治りも早い。
痛みは?」
「あ、最初の時みたいなのは。でも、力が入んないので」
「それはしょうがないな。もう少ししたら肘から下、手首の方までマッサージと無理無い程度に手を回してね。それがリハビリ。
なるべく使うようにするんだよ」
あれ?怒らないの?びょういんにげたのに。
「んふふ、どう考えて君が姿を消したのか、何となくはわかるよ。
怒る気持ちはあるよ。
でも、君は考える力が幼すぎた。
だから怒らない。
本当はね君に関わった人がどんな気持ちなるかは考えなきゃいけなかったね。
でもね、だからってあの人達にここにいるよ、なんて言わないから。
自分で、一杯考えて、行動してごらん」
「せ、せんせ?ボク、あんまりよくわかんないよ。優しくしてくれたから、だから全部を頼っちゃいけないって。
手が治ったら、お寺も……」
「寺にいなさい!」
「あっ!で、で、も、ボクはふこーのかたま」
「うるさい!菩薩様はなんておっしゃられた!それがわかるまで、うちの寺にいなさい!勝手に出ていこうなんてしたら、柱にくくりつけるからね!菩薩様から目をそらせないところにくくりつけるんだから!」
「あ、あ、」
「いい?まず君は身体をちゃんと治すこと。それも出来ないほど、君は幼くないだろ!」
いつもは優しいまさき君がすごい勢いで怒った。
「あーばさん、怯えさせんなよ。
あのね、ここにいる人間は誰も君を不幸の使者だなんて思ってないんだよ。
それは君が思い込んでしまっていること。
ゆっくりでいい。
般若心経は全部聞いた?
菩薩様が何を思ってあのお経を教えてくださったのかゆっくりゆっくり考えてごらん。頭じゃなくて心で感じてごらん。
今の君がすることはそれが大切だよ」
にのさんが、優しく優しくボクの頭を撫でてくれた。
先生も、まさきくんもうんうんって頷いて、ボクは……ボクは……