バフっ!
何にも言わないで、和がソファーに荷物を投げる。
帰ってきて早々だ。
入ってくるときも、いつもならチャイムを鳴らしてオレを呼びつけるのに、それも無かった。
なんか機嫌損ねるようなことしただろうか?
「お帰り、和」
「・・・」
返事が無いのは、マジで怒ってる証拠。現にその顔は膨れっ面だ。
「お帰り、遅かったね。どうした?」
「別に・・・」
キッチンの椅子に座っているオレを避けるように、ソファーに身を埋め膝を抱える。
今日は全員での収録だったんだけど、帰り翔さんに呼び止められて、気が付けばもう楽屋に和の姿は無かった。
あの時にはもう拗ねてたって事か?
「和、翔さんと話してたのは次のスチール撮影のことだよ」
「ふ~ん」
さっき投げた鞄を引き寄せると、ごそごそと中からゲーム機を取り出し音量を大きくしてゲームをし出す。
う~ん、どうやったら機嫌が直るんだろう?でも、何も言わずに自分の部屋に帰らなかっただけ、マシなのかもしれない。
「ねえ、和」
俺はソファーの背後にまわり和を抱きしめた。
「さわんな、潤くんなんか嫌い」
身体を捩って抵抗してくる和を力で抑え、ソファーを乗り越えて正面に回ると、ヨイショッとばかりに身体を持ち上げ膝の上に乗せる。
「何で嫌いって言う?俺は和の事がこんなに大好きなのに」
「嫌い・・・」
「大好き」
「・・・嫌い」
「和、大好き」
2人で交互に言葉を交わす。だんだん和の顔も、穏やかなものになってくる。
「・・・嫌いです、僕の事ほおっておく潤くんなんて、大っ嫌いです」
「ヤキモチ妬き」
「僕がいるのに、他の人と話さないでください」
また、そういうワガママを・・・できるわけないって解ってて言うんだから、和は。
「約束してくださいね」
「はい、はい」
「潤くん?『はい』は、1回で!」
「はい」
ふふふ、と満足そうに笑う和。
本当にかわいいオレの恋人は、わがままなんだから・・・。
やれやれと思いながらその横顔に見とれていた。
デンファレ:わがままな美人