今日は【まじめブログ】です。ラン要素は1ミリもありません。ご容赦ください。


12月に入り、職場などで忘年会が開催される時期になりました。ここ数年間はいわゆるコロナ禍の影響で自粛していた状況ではありますが、コロナの5類移行に伴い、一部の業界(業種)を除いてコロナ以前の状況に戻りつつあるようです。

数日前に見たNHKニュース番組の中で「忘年会に出席すると残業代出ますか?」などというトピックを取り上げておりました。

皆さんはどう思われますか?

【A】そんなもん、出るわきゃないだろ?
【B】Aの考え方は昭和的…時代は平成も過ぎ今や…出るかもしれないな!

どちらだと思われますか?

朝の忙しい時間帯だったので、あまりじっくりと見ることができなかったのですが、解説をされていた社会保険労務士の方が「場合によっては残業代が発生する」という発言をされておりました。完璧に発言内容を覚えていないので、内容をしっかりとは書けませんが、自分もほぼ同様の意見なので、簡単に記しておきます。



≪ 結論 ≫
基本的には時間外労働に対する超過勤務手当(いわゆる残業代)は発生しない。
しかし、あくまでも忘年会そのものが自由参加である場合に限られる。
特に管理職的立場のある者が参加を強制したり、建前上は自由参加であったとしても「でも参加しないと勤務評定に響くよ」などと、不参加による不利益取扱を示唆したりすると、忘年会自体が業務の範囲になり得る可能性が大である。「忘年会が業務」と認定されれば当然に超過勤務手当(残業代)が発生することになる。


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いわゆる残業代は定められた労働時間を超えて労働した場合支給されます(厳密には「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」に分けられますが、ここでは単に「時間外労働」とします)。

つまり、忘年会に要する時間が労働時間と認められれば賃金が発生するわけです。

では「労働時間」ってなんでしょうか…これがわかれば自ずと答えは出てくるわけですね。これにはいくつかの最高裁の判例がありますので、以下にご紹介します。

「労働基準法…32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」(三菱重工業長崎造船所事件…最1小平12.3.9労判778-11)

「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい・・・(以下省略)」(大星ビル管理事件…最1小平14.2.28労判822-5)


使用者はいわゆる社長さんだけに限られません。使用者と一体的な立場にある管理監督者も含まれます。
ですから管理監督者の立場にひとが「これは業務の範囲だから…」と参加を強制した場合、もう忘年会自体が業務になってしまう可能性が大になり、それが認められれば残業代が発生してしまうのです。

また、建前上は「忘年会は業務ではなく自由参加」であったとしても、「忘年会に参加しないとマイナス査定を受ける」などと「不参加ならば不利益取扱を受ける」ことを管理監督者から示唆されれば、忘年会自体が業務になってしまい、結果として残業代が発生する可能性が高まるのです。



「忘年会は自由参加」・・・結果として、これが一番安全ですかね。


テレビ番組の中でも紹介されていましたが、会社さんによっては「終業後に忘年会」ではなく「勤務時間内に忘年会」を開催している事例も紹介されていました。
これはなかなかのアイデアですね。
勤務時間内なので、アルコールの摂取ができなくなるデメリットはありますが、あくまでも勤務時間内なので残業代の問題は発生しませんし、延々と開催することもないでしょうから、終わりの時間を気にする必要がありません。個人的な事情があり、残業ができないひとも参加できますから、いいことづくめかと思います。個人的にはこれが一番いいかな・・・。



今日は「忘年会に参加すると残業代が発生するかどうか」について記しました。
忘年会を自由参加にしている以上、残業代が発生することはありませんが、参加を強制したり、あるいは不参加による不利益取扱を示唆したりすると、労働時間と認定され、残業代が発生する余地もあるよ・・・という結論になると思います。
実際に残業代を請求するためには、客観的にその事実を証明できる資料等々が必要になると思いますが。


本日も大変長い文章に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。




【参考文献】最新重要判例200 労働法増補版(大内伸哉著・弘文堂刊)

【引用判例】三菱重工業長崎造船所事件…最1小平12.3.9労判778-11、大星ビル管理事件…最1小平14.2.28労判822-5