長引く腹痛と体重減少を主訴に受診した13歳男児。

血液検査で顕著な貧血と炎症反応の上昇もあり、消化器内科で内視鏡をしてもらうことに。消化器内科からの依頼もあり、この時点で腹部CTも行っちゃったところ、大腸の一部に著明なむくみと、周囲のリンパ節腫大を認めました。やっぱりここでも明らかに異常。ただし、CTでは形態的な異常は分かるものの、粘膜の状態はやはりカメラで直接見ないとわからないので、お願いした通りに内視鏡検査をやってもらいました。

すると、

CTではわからなかった、大腸から続く粘膜上のアフタの多発、カメラのスコープがあたる部分に明らかな易出血性、縦につながる深い潰瘍、、そしてCTで浮腫が強かった部分は、もうカメラすら通らないくらいに浮腫みがひどく、そこで大腸カメラは断念しました。

続いて、胃・十二指腸の内視鏡もそのまま行い、胃内にも特徴的な病変があり、総合的な診断は

 

クローン病

 

でした。

第一問から正解してくださった方がいらっしゃいました(パチパチ~)

 

この症例では、全身状態は比較的よく、日常生活もそこまで制限されていたわけでもなく、発熱もなく、でしたが、やはり病歴の長さと著明な体重減少から血液検査を見るということに至れるか、というのが初期診療の肝になったと思います。事実、他院で年齢特有の過敏性腸症候群でしょう、と言われて、後からクローンと分かった症例も何例か聞いたことがありますし、この年代での消化管病の診断は難しいです。

 

ちなみに・・・

クローン病とは、指定難病のひとつで、原因不明に腸の粘膜に強い炎症を起こす病気です。クローン病とよく似た病気で、潰瘍性大腸炎というものがありますが、クローン病はどちらかといえば大腸よりも小腸に病変を持つことが多く、診断がより難しくなります。原因はよくわかっておらず、食生活の欧米化が問題になっているという人や、遺伝的な素因があるという説、結核菌のような何らかの特殊な菌への感染が関与しているという説など、様々な説があります。

治療としてはステロイドや免疫抑制剤などの投与、絶食や経腸栄養などで腸管の安静をはかる栄養療法などがありますが、クローン病はいったんよくなっても再燃しやすく、最終的に腸の機能が落ちてしまったり、狭窄を来して手術が必要になったり、と、かなりやっかいな病気でもあります。小さな病院では治療自体が困難で、多くは専門病院での専門的な治療が必要になります。

 

診断はついてこちらとしてはホッとしたものの、今後のこと、ご家族の気持ちを考えるとどんよりしてしまいました。なんとか頑張ってほしいです。

 

 

もうずっと前から使っている聴診器。

実は壊れたりして今三代目ですが、安価なもので間に合っています。