ドクターNで解答になった急性硬膜外血腫について。

そもそも硬膜って何?って話なんですけど、頭蓋内は脳みそがあって、それを取り囲む柔らかい軟膜があって、その外側に硬膜といわれる丈夫な膜があり、そのさらに外側が頭蓋骨になります。血管は脳の表面にもあるし、硬膜周辺にもありますが、硬膜より外側で血管が破れて血腫(=血だまり)を作った状態が硬膜外血腫です。ちなみに、脳表面の軟膜周辺の出血は硬膜下血腫といい、脳の内部の血管からの出血はそのまま脳内出血といいます。

 

硬膜内外の血腫は主に外傷性によるものが多いですが、内か外かで経過が多少変わります。

以下、硬膜外血腫と硬膜下血腫の模式図を書いてみました。

 

 

緑色が硬膜、その外側が頭蓋骨のイメージです。

赤色矢印が硬膜外血腫、黄色矢印が硬膜下血腫ですが、硬膜外の出血では、基本的にはその場所でじわじわ出血を起こし、血の逃げ場所がないために、どんどんコブを作っていきます。それに対して、硬膜下血腫は、脳の表面のしわに沿ってある程度広がることができるので、コブのような血腫ではなく、いわゆる「三日月」みたいな形になることが多いです。

 

硬膜外血腫は比較的短時間に多くの出血がある場合が多いため、受傷後数時間以内に意識障害や瞳孔不同などのやばい症状が出てきますが、今回は直後には出血量が少なくほとんど症状が見られませんでした(頭痛はあったと思います)。しかし、コブになるタイプは、出血が止まらずにコブが大きくなってくると脳の実質を押してしまうため、さらに圧迫が進むとと、延髄とか、呼吸中枢など生命維持に関わる「脳幹」の部分が圧迫されてしまい、心臓や息が止まってしまうことだってある危険な状態になります。

 

脳が押されてヤバい状況になっているひとつの指標は、「ミッドラインシフト」といって、左右の脳の真ん中にある線(=ミッドライン)が、コブのないように押されて歪んでいる(=シフト)という所見で、これがあると、圧排があって減圧を急がなければいけない状況とされています。(図の黒色の矢印)

 

硬膜内血腫は、ゆさぶられっこ症候群などでも見られますが、軟膜周辺のちっちゃい血管が切れて、何日もかけてじわじわ出血が進みます。脳の圧迫症状は出にくいとされます。数か月後、何かおかしいと画像をとって初めて気づかれることもあります。

 

今までも、何度も頭部外傷は見てきましたし、必要に応じてCT検査は撮っていましたが、ここまでミッドラインシフトバリバリでヤバかったのは久しぶりに診ました。そして、昨日も書いたけど、数時間かけてできた血腫であり、初期に来られていて、仮にCT撮っていてもすぐには分からずに一度は見逃していた可能性が高いな、と思っています。救急外来はどこに地雷があるのかほんとわからんので怖いっす。

 

ちなみに件の子は、その後後遺症なく元気になりました。よかったです。

 

 

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