東日本大震災からもう9年も経ちます。

いまだに2500名あまりの方が行方不明で、その帰りを待ち続けている家族の方がいます。

そして、「9年経った現在も被災者」と感じておられる、被災者の方がまだまだたくさんおられるということです。

 

9年前。

前の勤務地の小児科病棟は6階にありましたが、不意にめまいのような感覚に襲われ、「アレ?」と思っている間に、目の前の救急カートがぐわんぐわんと移動。そこではじめて地震だと気が付きました。

揺れが収まってから、NICUの人工呼吸器などのチェックをしたり、他病棟の重症患者さんを診に行ったり。

そして、ナースステーションに看護師さんが集まっていて、「せんせ、すごいことになってるよ」と言われて、みたテレビの画像が忘れられません。

そこから病院から有志を募ってD-MATが東北まで遠征に行ったりしていましたが、私自身は妊娠を考えていた時期で、原発の状況が分からないため、志願せずに残って診療業務を続けました。

 

原発、と言えば、「福島」、そして「チェルノブイリ」と連鎖的に思い起こされる方もいらっしゃるかもしれません。

チェルノブイリの原発事故のあとは、小児の甲状腺がんが明らかに増加したとの報告があるため、福島周辺で生活する小児への影響についても当時かなり取りざたされました。デマもかなり多く見られました。

しかし10年経過した現在の現状、調べうる限りでは、福島ではチェルノブイリと同じような状況ではない、というのは専門家の考えです。

というのも、チェルノブイリでは、汚染されたミルクなどの食物から、子どもたちへの放射線被ばくが起こったとされています。福島ではそのことを教訓に、食物の厳格な線量測定がなされ、内部被ばくが最小限に抑えられたとされています。(甲状腺がんで問題なのは外の環境からの外部被ばくよりも、食物などの内部被ばくです)

そして、チェルノブイリでは、もともと甲状腺に取り込まれる栄養素であるヨードが不足しがちなので、摂取されたヨードがすぐに甲状腺に取り込まれる可能性が高いのですが、日本ではヨードは普段の食生活でしっかり摂取されているため、仮に放射性ヨードを一時的に摂取してもそれほど問題になりにくいというわけです。

10年、20年と経過を見ていかないと分からないことでもありますが、とりあえずもうすぐ節目の10年を迎えるにあたって、悪いニュースばかりではないのかな、と思っています。