ドクターN解答編です。
さて今回は、学童の腹痛。
この症例のミソは、「食前の腹痛」そして、「食後は改善する」
という2点に尽きます!
お腹の中を想像してみましょう。
ごはんの時間が近づくころには、胃の中身はからっぽになっています。
そろそろおなかが空いてくると、胃の中の胃酸分泌が亢進されますが、食物が入ってくるまでは、胃酸は直接消化管粘膜に接しています。
胃酸はpH2の強酸性です。通常、胃粘膜は粘液のバリアで胃酸から守られているので平気なのですが、バリアの少ない十二指腸はこの胃酸にやられてしまいます。
この状態が「十二指腸炎」です。
粘膜の損傷の程度がひどくなれば、「潰瘍」になりますし、潰瘍が深くなると穴が開いてしまう「穿孔」という状態にもなります。
特に十二指腸は胃に比べて粘液のバリアも弱く、また壁も薄いので炎症を起こしやすく、さらに穿孔もしやすくなります。
胃内に食べものが入れば、胃酸が薄まるため、食後は改善します。
つまり、このキーワードはそのまま「十二指腸炎」の診断につながると言えます。
ちなみに、胃炎のキーワードは「食後の腹痛」で、食物が入って胃の荒れた粘膜を直接刺激してしまうからと言われています。
十二指腸炎も胃炎も、治療は同じで、「胃酸を抑える」こと。内服薬が治療の中心となります。
ちなみに、こうした消化性胃炎・十二指腸炎や潰瘍がある場合には、ピロリ菌との関連が疑われます。
日本人はピロリ菌の感染率が高いことも知られています。
子供でのピロリ菌検査は適応があまり通らないので感染率ははっきりとは分かりませんが、特定の地域で行われている集団健診での陽性率は中学生で10%程度。でも、年齢が上がるにつれて増加し、60歳以上では60%以上の方が感染していると言われています。
ピロリ菌は胃癌のハイリスク因子ともなるために、積極的に除菌が勧められます。
もしも、こうした症状にお悩みの方がありましたら、ひとまずは小児科に相談しましょう。
追記:
食道炎では、と解答してくださった方がいて、確かにそっちもありうるな!と思った次第です。食道炎は腹痛というよりは胸痛で来ることもほうが一般的ですが、人によっては腹痛と感じるかもしれないので。と、いうわけで、食道炎も正解ですね!
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