高校1年生のときだった。僕が入学した年は男子校時代を除けばおそらく母校の歴史上では一番女子の数が少ない世代だった。
僕のクラスは45名中女子8名。進学校だったので、みな「彼氏なんかつくらず一流大学目指すのよ!オシャレ?なにそれ」って感じで近寄りがたい。今思えば非常に勝手なイメージだったのだが、入学当初はそんな固定観念で彼女らと接していて、会話を交わすこともほとんどなかった。(ちなみに今は女子の数が多いほうが学力レベルが高い学校になると言われてもいるが、当時は逆だった)
1学期も終わるころ、突如ほとんど話したこともない女子のひとりが話しかけてきた。くりっとした大きな目がとても魅力的でクラスの女子の中では一番はきはきして明るい子。他の女子たちもなんとなくこちらを気にしてる気配。
降ってわいた慣れない状況に思わず「なんだよ!」と大声を出してしまって「怒らないでよ!」とその子は笑って言った。
「お願いがあるんだけど・・・」
話を聞いてみると、クラスの女子8名全員で夏休みに八ヶ岳の貸別荘に旅行に行くらしい。女の子だけだとこわいので、一緒に行ってほしいというのだ。同行する男子は僕のほかにはもうひとりだけ。謎だったのは、もうひとりのやつは学級委員で、とても人望あるイケメンなのでわかる。で。どうしてもうひとりが僕なのだ。でも、まあ旅行は好きだしいいか、ということでOKした。
昔過ぎて旅行中なにがあったかよく覚えてないが、なんか盛り上げ役やってた気はする。ちょっと怪談で怖がらせたりとかして。
そして無事に旅を終えてしばらくして、1枚の暑中見舞いだか残暑見舞いだかが届いていた。僕を誘った子からだった。
「八ヶ岳楽しかったねー。窓の外に誰かいる!とかきゃーきゃー騒いだり」とか書き添えてあった。
いや、僕、親には女の子と行くとはひとことも言ってなかったんだよね。たぶん親に葉書読まれてるよね・・・。気まずい夏休みだった。
そしてその後も、どうして僕が誘われたのは結局謎のままだった。その子に告白されたなんてこともなかった。
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「セピア・ガールズ」シリーズは、付き合っていたわけでもなく、片想いしていたわけでもないが、何年かに1回なぜだか思い出してしまう女性について書いた私小説的なものです。