私には、働いている店が経営不振でクローズせざるを得ず職を失った、という経験が過去に2度あります。
と書くと、なんだか私が疫病神のようですが、そうではなく(だよね?)、この辺りではビジネスを継続するのが難しい。
この辺りだけではなく、ニューヨークでも5番街など次々と有名ブランドの店が消えていきます。
どんどん高騰するレントに売り上げが追いつかなければ、クローズするしかありません。
一方、めったに行列しないアメリカ人が並ぶ店もあります。
しかしそれも一時のことで、目新しさが無くなればすぐに忘れられます。
この目新しさというのもやっかいで、突飛なというだけでは好まれません。
私の住むところから海沿いに40分くらい車で行ったところに、シーフードのレストランがあります。
ここはいつもびっくりするくらい混んでいます。
大きなアウトドアのデッキがあり、夏は交通整理員のバイトを雇うほど。
店内は大きなバーカウンターがある他は、とりたてて他のレストランと違ったところがあるわけでも、特に安いわけでも特においしいわけでもありません。
ではなぜ流行っているか?
このレストランの横に短い鉄橋があり、車がそこを通る度に「ウイーーーン」と音を立てます。
普通なら、うるさい!と疎まれるこの音ですが、このレストランのオーナーはこの橋を「Singing Bridge」と名づけました。
うるさい!と苦情を受ける代わりに、どんな音がするのか興味を持った人々が押しかけています。
それが直接の原因かどうかは分かりませんが、とにかくこの店の流行りようはすごい。
さて、話は現在私が働くレストランに。
新しいだけあって、どこもピカピカ、インテリアも良し、ふたつあるバーには絶えず30種類もの生ビール、食べ物はそれほど高くないのに、どれもとてもおいしい。
流行らない理由がない感じですが、どうなんでしょう?
食べ物の素材・産地にこだわって、全て手作りで洗練されているんですが、何というか、”いい感じ”でまとまっていて、大多数にアピールする決定打に欠ける気がします。
きっと食のプロが好みそうな店、というのか。
この町にはレストランが町の規模に比して異常に多いのですが、それも災いして、頭ひとつ抜きん出るには特別な何かがないと。
うーーーーん、私は経営学を学んだこともないし、じゃあどうしたらというのも分かりません。
じわじわと客は増えてはきていますし、まさかまた働いているところがクローズせざるをえないのを見るなんてことには、ならないと思うのですが。