向いてる方向
昔、ある先輩レスラーにこんな事を聞かれた事がある。
「阿部ちゃん(自分の本名です)は誰の為にプロレスをやってるんだ?」
と。
自分の答えにその先輩は少し斜に構えたような態度で笑い
「俺はプロモーターの為にやっている」
と言いました。
それも一理あります。
ビターテイストな大人の答え。
プロモーターが満足すれば、次も呼ばれるだろうしお金にもなる。大正解だと思います。
でも、その時の自分は
「何か嫌だな」
と思いました。
自分はガキの頃…小学3、4年生の時にプロレスを初めて観た時に、稲妻で打たれたような衝撃を受けました。
人生の中でそう何度もない、様々なカルチャーから受ける、人生や人格形成に影響を与える程の衝撃。
そこからプロレスに夢中になり、たくさんの驚きや感動、泣き笑いをもらい、プロレスを観る事が日常の一部、日々の生活の楽しみや支えになりました。
中学生の時にプロレスラーを目指そうと思った時も、試合を観てくれた人に自分がプロレスからもらった気持ちを伝えたいと思ったし、それは今でも変わりません。
お客さんは貴重な時間とお金を使って会場に観戦に来てくれています。
使うお金はチケット代だけでなく、往復交通費や食事代、グッズを買っていただいたり、更には差し入れ(本当に無理しないで下さい)をいただいたり…
地方在住の方などは、家から駅まで激チャリしてから電車で来てくれている方もいるでしょう(笑)。
観戦に来て下さるお客さんの日常生活の中では、良い事だけではなく、辛い事や悔しい事、悲しい事もあると思います。
こんな光栄な話はないです。
人になんと言われようと、冒頭の先輩レスラーに聞かれた時に返した答えと同じ事を今でも思っています。
今聞かれても言い返してやります。
「自分はお客さんの為に試合をしています」
と。