私は、ベンゾジアゼピンを使用し、減薬・断薬したあと、平衡感覚を失いました。
立っているだけで身体が揺れる。
歩けば左右に振られる。
まっすぐ歩けない日もある。
頭を動かすと身体のバランスが崩れる。
床が揺れているように感じる。
目から入る情報と身体の感覚が一致しない。
暗い場所では、さらに歩きにくい。
これは「気のせい」ではない。
実際に身体の平衡機能が破綻している。
そして、この症状を理解するうえで重要になるのが、前庭機能障害という概念だ。
前庭機能障害とは何か
前庭機能は、身体の傾きや動き、頭の位置を感知し、姿勢やバランスを保つために不可欠な機能だ。
内耳の前庭器官だけではない。
前庭から送られる情報を脳が処理し、視覚や筋肉・関節から入る情報と統合することで、私たちは立ち、歩き、身体を動かしている。
このシステムが正常に機能しなくなれば、平衡感覚は失われる。
だから、ベンゾジアゼピン後遺症で
「歩けない」
「身体が揺れる」
「地面が安定して感じられない」
「頭を動かすとバランスを失う」
という症状が続いている人にとって、前庭機能障害は無視できない問題だ。
「めまい」ではない
被害者が訴えているのは、単純な「めまい」ではない。
平衡感覚そのものが狂っている。
自分の身体がどこにあるのか分からない。
身体が傾いていることを正確に把握できない。
歩こうとしても足元が定まらない。
視線を動かすと身体がついていかない。
これが毎日続けば、外出することさえ困難になる。
階段を下りることも怖くなる。
つまり、平衡感覚の喪失は単なる不快な症状ではない。
生活そのものを奪う身体障害になり得る。
ベンゾジアゼピン後遺症との関係
ベンゾジアゼピンは中枢神経系に作用する薬だ。
長期間使用した後に減薬・断薬すると、離脱症状としてめまい、ふらつき、感覚異常、視覚異常、身体の不安定感などが生じることがある。
そして、その症状が長期間続けば、本人にとっては「薬をやめた後から平衡感覚を失った」という明確な身体的経過になる。
重要なのは、平衡感覚が内耳だけで決まるものではないということだ。
前庭系からの情報を脳が処理し、視覚や身体感覚と統合して姿勢を維持する。
そのため、ベンゾジアゼピン後遺症による平衡障害を考えるときには、内耳の損傷だけを問題にするのではなく、前庭系と中枢神経による感覚統合・姿勢制御まで含めて考える必要がある。
「異常なし」では終わらない
検査をして「異常なし」と言われた。
それでも本人は歩けない。
身体は揺れる。
頭を動かせばバランスを崩す。
地面が揺れている。
こうした現実がある。
検査で捉えられなかったことと、症状が存在しないことは同じではない。
「検査で異常がないから大丈夫」ではなく、「何の機能が失われているのか」を考える必要がある。
ベンゾジアゼピン後遺症による平衡障害を訴える人たちがいる。
その身体症状を「不安」「気のせい」「考えすぎ」で片付けるのではなく、前庭機能、視覚、固有感覚、脳による感覚統合、姿勢制御という身体の仕組みから捉える必要がある。