11月4日、アゼルバイジャンでの「RIZIN LANDMARK 7」で王者ヴガール・ケラモフを下してフェザー級新王者になった鈴木千裕が、試合後に「不良やヤンキーが格闘技の質を下げている」と語った。

CoCo KARA next

[文:Show大谷泰顕]


事あるごとに語られ、格闘技界とは切ってもきれない縁で結びついているアウトローの世界。

近年ではそういう世界とは無縁で、幼い頃からスポーツ、競技として格闘技に向き合い表舞台で活躍する選手も増えてきた。

ボクシングで言えば、井上尚弥、元キックでは那須川天心、MMAでは堀口恭司などがその筆頭格だろうか?

細かな体重制限やルール、無法者が集まるにはあまりにも厳しすぎる世界。

しかし裏を返せば、それさえ守れれば、そして強ければどんな者でも許され輝ける世界。

学歴がなかろうが、過去に過ちや前科があろうが、関係ない。

そして人は、そのような落伍者のサクセスストーリーにえも言われぬ魅力を感じる。

マイクタイソン然り。
挙げだしたらきりがない。

清廉潔白な成功者を人は妬み、劣等感を抱く。
普段は表に出さない自分の生活、環境、社会への不満や鬱憤を吐き出す場所を探している。

アウトローではないが、もしも、坂本博之が養護施設出身でなければ、ファンはあんなに応援しただろうか?

自分はブレイキングダウンを見ないが、あの団体から「朝倉未来」のような選手が出てきたとしたら、、、強ければ否定はできないだろう。

道を外れたり、何一つ持たない者でも、本物の舞台で輝くことで、戦い続けるなかで、アウトローの世界から抜け出せる者もいる。

矛盾しているようだが、ボクシングや格闘技とはそういう者たちの受け皿であり、更生の場であったし、今もそれは変わらないと思っている。

ブレイキングダウンに出る者たちも、注目を集めたい、自分を売り出したいというなかで、舞台に立つ以上は、プロの真似事としても「覚悟」をしているだろうし、大怪我をしようが、世間で何を言われようが自己責任だろう。

彼らが格闘技の品位を下げているという意見や、“リングは神聖”という言葉もあるが、自分はそこまで高尚なものではないと思っているし、敷居を高くする必要もないと思っている。

前田日明さんは「ジ・アウトサイダー」で不良に更生の道を与えた。


朝倉兄弟もあのリングから表舞台に出た。

朝倉未来に前田さんほどの信念があるかは分からないし、「朝倉未来」という名前と彼の影響力をきっかけに、もう彼自身がコントロールできないほどブレイキングダウンは一人歩きしているのかもしれない。

ただ、舞台に立つ者の個性を引き出すという部分では、ブレイキングダウンは見たことはあっても、ボクシングや格闘技は見たことがないという人は本当に多い。

明らかにその点ではプロモーション力で劣っているのも事実。

井上尚弥=ボクシングの人気ではないし、みなが井上尚弥のようにはなれない。

那須川天心はあくまで那須川天心でしかなく、キックの人気にどこまで繋がったか?

強くなりたい、やりなおしたい、舞台に立ちたい、輝きたい。

一人一人ではなく、多くの人が輝ける舞台には注目が集まる。

“ただ真っ直ぐにー

一本の道を進むは美しい

じゃが普通はそうはいかぬもの

迷い 間違い 回り道もする

それでええ 振り返って御覧

あっちにぶつかり こっちにぶつかり
迷いに迷った そなたの道は

きっと誰よりも広がっとる

ええわいの 道が広がった分おぬしは

誰よりも人に優しくできる”
井上雄彦『バガボンド』

道を閉ざすのではなく、共存できたら良いなと自分は思うのです。