まさに決着戦だったと思います。
那須川天心応援シートで観戦していて、天心がパンチを当てると周りが大きな声援を送っているなか、逆に冷静に見ることができました。

天心は前回のようにあまり足は使わず、序盤からベタ足で拓真に向かい合っていました。
まるで「後の先(ごのせん)」を合わせようとカウンターを狙っているように、、、。

ただ、そこは拓真も百戦錬磨の経験者、天心が狙っていることは十分察知して迂闊には手を出しませんでした。

やはりというか、これは天心がボクシング畑出身ではないので差が出て当然なのですが、細かなパンチの手数では井上拓真が上回っていました。懐に入ってのコンパクトさや回転の速さ、そこは一枚も二枚も拓真が上手でした。

お互い大きな被弾はなく、4R終了後の公開採点は38-38、40-36、39-37で2者が拓真を支持。1人のジャッジは拓真にフルマークで付けていました。

これはあくまで肌感覚であり、プライムビデオで映像を見返していないので見落としはあるかもしれませんが、それでも天心応援シートで観戦しているなかでも、個人的にはそこまで違和感のないジャッジでした。

見方や捉え方、ジャッジの好みもあるでしょうが、やはり天心は手数が少なく、近距離での打ち合いも上記に書いた通り拓真が上回っているように自分には見えました。

Xのボクシングゲーム開発者という方が書いていたのですが、、、

 

この方がカウントした中での計算なので確証はないですが、それでも実際に会場で見ていても手数や有効打に差はあったように思います。

今回天心はボクシングというより、キックボクシングからキックを無しにした戦い方、ある意味ボクシングにこだわらず「ボクシングとキックの融合」をしたように感じました。

ポイントゲームで拓真に上回られたという話もありますが、元々天心もキック後半の戦い方はポイントゲーム寄りになっており、得意でした。

しかし本来の天心は「倒しに行ったときの方が強い」と父の那須川弘幸氏は評しており、そうして倒しにいった戦い方をキック最終戦の武尊戦では見せていました。

今回もその姿勢が見れた気がしますが、それでも拓真には及ばなかった。

天心がダウンを奪った後の拓真の冷静さ、拓真に堤戦での敗戦がなければ、これが初戦の天心戦だったなら、あそこから拓真は崩れていたかもしれません。

しかし、堤戦での敗戦や天心戦での経験が井上拓真をさらに上のステージに押し上げました。

ジャブの差し合いでも明らかに拓真の方が速く、天心は被弾。また、特に感じたのは際の攻防。

ダウンを奪われた瞬間は拓真の油断や甘さが出たのかもしれませんが、それ以外のところではほとんど近距離になると細かなコンビネーションで天心を上回りアッパーなども当てていました。そして、危険を察知すると天心の懐に入りクリンチ。

「クリンチの反則を取れ」との意見も見聞きしましたが、その反則を取られると厳しくなるのは天心も同じ。キック最後の武尊戦でも見せていましたが、天心もクリンチワークは得意です。しかし、ボクシングの土俵でお株を奪われた形でした。

堤誠也が拓真戦で見せたクリンチをされたら引き剥がすということが天心にはできなかった。堤誠也のように拓真にプレッシャーを与え、気迫で上回ることができなかったのが現実です。

もちろん、ボクシングという競技の引き出しや経験値で堤誠也と那須川天心には大きな差がありますし、あれは堤誠也のスタミナ、フィジカル、メンタルがあってこそできる戦い方。

改めて、技術があった上での心と体のシンクロが今回の井上拓真も素晴らしかった。

そして、これは忘れてはいけませんが、那須川天心のやっていることも異次元です。キックボクシング42戦、MMA4戦ともに無敗。ボクシングデビュー2年弱で世界挑戦、3年弱で世界チャンピオンからダウンを奪い、前戦今回と判定まで戦い抜きました。

那須川天心が幼い頃から空手やキックボクシングをやってきたように、井上拓真も幼い頃からボクシングをやってきました。

それでも世界王者(暫定)になるまでに約5年。

天心は今年で28歳、社会人で言えば働き盛りでしょう。プロボクサーとしてはまだ4年目ですが、10代前半から格闘家として戦ってきたことを考えると、すでに円熟期かもしれません。

ここからどのような決断をするのか?
ただ、どんな決断をしてもこれからの「那須川天心」にエールを贈りたいと思います。