K-1(新生K-1とは別団体)で活躍し、その後ボクシングに転向して日本ヘビー級代表として世界と戦った藤本京太郎が新生K-1への参戦を表明した。



京太郎といえば、金銭的な面でなかなか世界戦のチャンスに恵まれない中、ボクシングファンの間では去年のダニエル・デュボア戦が記憶に新しいところ。


次世代のスター王者候補といわれるデュボア(現WBCヘビー級シルバー王者、現WBOヘビー級世界ランキング2位)に挑んだこの一戦。結果は2R KO負けという厳しいものであったが、一部のファンの間では「デュボアと戦えたことが凄いこと」という肯定的な意見も多かった。

https://the-ans.jp/news/98398/2/


京太郎としては「そんなことで褒められても」という思いもあるかもしれないが、FEG体制の旧K-1でも武蔵の次の世代として最も世界と戦えた数少ない日本人の一人だった。


元々はK-1トライアウトで見出され、その後徐々に頭角を現した京太郎(ちなみにこのトライアウトには、元野球選手の立川隆史や、現在新生K-1で活躍している若き日の野扖正明少年も参加している)

https://gbring.com/sokuho/news/2007_02/0225_k-1.htm


キックボクサー時代は「狂太郎レンジャー」「強太郎レンジャー」「前田慶次郎」「京太郎」と度々リングネームを変え、その奇抜なヘアースタイルで記憶に残っているファンも多いかもしれない。


ただ、それだけではなかったのも事実。

日本人としては史上初重量級のK-1世界王者のベルトを巻いたのが彼である。


K-1ではWGPのトーナメント覇者のベルトとは別に、2007年に階級制の最強を決めるK-1スーパーヘビー級(100kg以上)K-1ヘビー級(100kg以下)のタイトルを新設。その第2代K-1ヘビー級王者(初代はバダハリ)を決めるトーナメントに、グーカンサキ、タイロンスポーン、メルヴィンマヌーフという強豪ひしめくなか参戦。初戦メルヴィンをKOし、決勝ではグーカンサキに判定勝ちして見事第2代K-1ヘビー級王者に輝いた。


その他にも、マイティモー、バンナ、武蔵、中迫などから勝ち星をあげ、K-1ヘビー級王者の防衛戦では、アーツの減量失敗がありつつも、「20世紀最強の暴君」と云われた彼をKOで下して初防衛に成功している。

また、負けはしたものの、最凶王者セームシュルト、ロシアの速射砲ルスランカラエフ、DREAM二階級制覇王者ゲガールムサシなどとは判定まで戦い抜くなど健闘。特筆すべきは、そんな錚々たる顔ぶれと数多く試合をしたなかで、K-1時代には一度もKO負けをしていないという点。そんな彼の新生K-1参戦である。


正直言って、今の新生K-1の中重量級と彼が戦ってきた旧K-1のレベルはかなりの差があると思っている。


2017年新生K-1 WGP初代ヘビー級王座決定トーナメント優勝のアントニオプラチバットは、旧K-1崩壊後に世界最大のキックボクシング団体となったGLORYで現在ヘビー級ランキング5位。同トーナメント準優勝のイブラヒムエルボウニはONE FCに参戦後、1勝2敗。2018年、アントニオプラチバットを判定で下して第2代WGP王者となったロエルマナートは、今年の2月にGLORYでライトヘビー級ランキング外の選手に1R KO負け。


世界的に見ても、格闘技団体が乱立するこの格闘戦国時代、日本で独占的に「K-1」の名称を使える団体「新生K-1」の世界王者=世界最強とは当然ならない。


それでも、日本から生まれた「K-1」というブランド力は今も健在で、新生K-1(旧K-1とは別物だが)のベルトやタイトルを手土産に世界の他団体に参戦する選手がいるというのも事実。


そして、その日本で誕生した「初代K-1」で、崩壊前に最後の日本人として化け物外国人と戦ってきたのが京太郎である。


ボクシングの試合を見ても、キックボクサー時代とそれほどファイトスタイルは変わらなかったので、キックへの回帰もそこまで難しくないように思える。


現在、新生K-1にヘビー級の逸材はいないので、初代新生K-1 WGPクルーザー級王者シナカリミアンや、第2代王者K-Jeeなどとの対戦が期待される。


現役ヘビー級キックボクサー世界最強と謳われるリコヴァーホーベン(現GLORY世界ヘビー級王者)も、未だに完全なバダハリ超えはできていないなか(初戦はバダの負傷TKO負け、二戦目はバダが2度ダウンを奪うも、再び負傷でTKO負けhttps://fight-report.com/result-glory-191222-1/)、ある意味、新生K-1への京太郎の参戦は、過去のK-1の偉大すぎる呪縛を解き放つチャンスでもある。


京太郎初戦。新生K-1には、是非とも勝負論のあるカードを期待したい。