始まりは、私が子供の時に魔術の真似事をしている時だった。大抵の少年少女は、魔術師が行う動きを真似するだけのお遊びだ。低級魔術師は火球や医療技術で人々を助けてくれるので重宝されていた。だが、私だけは魔術師の動きではなく、その構造に注目していた。

 

 大半の下級魔術師が儀式(セレモニー)を重んじる中、私だけはその隠そうとしていた魔術の構造を理解していた。私が魔術を使って火球を作り出したのは、わずか4歳の時であった。

 

 私が火球の魔術を一度見ただけで発生させた事に、仲の良かった子供達がドン引きしていた。それから、私は親に勧められるように魔術学校へ入れられる。

 

 魔術の才能があるという事で若い能力を育てるためだと言うが、親や村人の本心は私を村から出したかったのだろう。幼い時の私は、親に認められたと思い、必死で魔術の勉強をした。親や村人の本音が理解できたのは、奇しくも私が18歳になった時だった。

 

 その時私は、大魔術師として人々から奇妙な目で見られて隔離されていたのだ。人々は簡単な魔術を行う者は優遇するが、それが叙々に強くなっていくごとに脅威の目で見るようになる。

 

 高等魔術師として、お金を貰って人を生き返らせれば喜ばれる。だが、その魔術師の住む場所は指定され、高官や人々から監視される。ほぼ全ての魔法をマスターした大魔術師となれば、なおさら危険視される。

 

 人々のいない森や山、湖などに住まわせられ、村人が用事がある時だけ訪ねてくるのだ。しかも、魔術協会によって一定の金額が定められており、善意であっても無闇に人を生き返らせたりしてはいけない。

 

 大抵の高等魔術師以上の者は、恐れられて結婚も出来ない状態でいた。最年少で魔術学園を卒業した私だが、思春期の真っ只中でも結婚はおろか恋人もできない。魔術学校を卒業した者は、自然と魔術学校の講師を目指す。

 

 だが、魔術学校の講師になるには、ダンジョン経営5年以上という実務経験が必要なのだ。知識はあっても資金のない私には、地道に魔術師として金を稼ぐしかないのだ。そう、ダンジョン経営は、全魔術師にとっての理想の夢なのだ。