数十年前、猫山教授はある研究を計画した。
犯罪プロファイリングとは、犯罪現場の犯人の行動を分析して、犯人像を予測する事である。
犯罪者は、普段の生活習慣や行動によって、犯罪を犯す傾向がある。
ならば、犯罪者を徐々に犯罪を犯し難い生活習慣や行動をさせる事によって、犯罪行為を犯さなくなるのではないか? という研究だ。
実際の死刑囚などの重犯罪者は、リスクが多過ぎる為に実験協力は不可能と考えたが、痴漢や盗撮などの軽犯罪者ならば、実験協力を願い求める事はできる。
早速警察署と連絡を取り、数人の犯罪者を選ぼうとしていたが、不幸な事故によって猫山教授は死にかけてしまう。
瀕死の猫山教授を助けるには、ネコと羊を合わせたモコネコになるしか方法がなかった。
こうして、猫山教授はいろいろな経緯を経て、シャーケット・ネコーズになったのである。
そのネコーズは、暇潰しに調べたバイブル(聖書)の知識を使い、悪猫どもを教え始めた。
「バイブルは、創造から見方が神視点ニャン!
他の創造神話は、人間視点の見方が強いニャン。
例えば、ギリシャ神話は、天と地と地底を三つに分けたけど、超不公平ニャン。
もしも宇宙の存在を知っていたら、三つに分ける事はできなかったはずニャン。
だから、ギリシャ神話は人間視点キャン。
他にも、エジプト神話も人間視点キャン。
天と地を二つに分けるという見方も人間的ニャン。
でも、バイブルは最初に天と地を作って、それからいろいろ調整しているニャン。
だから、それなりに信用できるニャン!」
悪猫どもは、喧嘩をやめる事をせず、ますます激しく争うようになった。
そこで、ネコーズは適当な仲直りの話を語り始めた。
超有名な話だから、悪猫どももネコーズの話を聞き始めた。
「カインとアベルの話を知っているかな?
兄のカインが、超優秀な弟のアベルをフルボッコに殴って、最終的に殺してしまう話ニャン。
ケンカの原因は、神の好意を得られなかった事ニャン。
一応、神がカインに事前にアドバイスを送るけど、カインは無視してアベルを殺してしまうニャン。
しかし、カインがアベルを殺さなかった場合、どうなったか知りたくないかね?」
「えー、さして興味無いニャ」
「そんな事言わず聞きなさい。
実は、カインと対極の行動を取った人物が聖書の中に存在しているニャン!
その人物の名はエサウ。
弟のヤコブがせこい策略を使って、神の祝福を奪い取ったニャン。
まあ、一時は感情に流されかけたエサウだけど、時と祝福が彼を救たんだニャン。
そう、にわか宗教家は、エサウは悪い人物として見ているけど、実は立派な男だったんだニャン。
本来は、エサウが長子の権を得る権利があったんだが、腹減りだったのでヤコブに売り渡したんだニャン。
多くの宗教家は、このエサウの行動を批判しているけど、実際にはヤコブの方が適任であると見ていたのかもしれない。
まあ、実際そうだったし……。
二人の父親イサクが死ぬ寸前、ご飯を食べさせてくれた者に、家系を継ぐ祝福を与えることにしたのだが、ヤコブは事前に食物を準備していたので、順当にヤコブが家系を継いだニャン。
エサウは、家系を継げなかった事を後悔し、ヤコブを殺そうとしたが、母親の介入もあって無事に逃げ切る事ができたんだニャン。
ヤコブは、美女の妻ラケルと不細工の妻レア(別にそれほど差があったわけじゃないと思うけど。恋人もいない寂しいニートだったから、親から無理矢理結婚させられた可能性がある。それならば、目に輝きがなくても仕方ない)と結婚し、幸せに暮らして数年が立ちました。
ヤコブとエサウが出会うという機会が発生し、ヤコブは数度に分けて謝罪するという方法を取り、ヤコブとエサウは仲直りしたのです。
その時、お互いに裕福になっていたので、これ以降は争い合う事もありませんでした。
聖書の創世記では、イサクがエサウに祝福をあげていないという記述があるけど、実際にはどちらにも祝福があったのです。
そう、ヘブライ十一章二十節では、二人が祝福されている事を示している。
エサウは確かに一時期失敗したが、ヤコブを許した事によって祝福を受けたニャン!
なので、お前達二匹もケンカは止めるのが良いニャン。
このケンカの原因になっている寿司は、僕が責任を持って食べるニャン!」
落ちていた寿司を食べる為、キリスト教司祭でも知らなかった教えを説いたネコーズ。
しかし、その寿司が口に入る事はありませんでした。
ネコーズとモコソンに、仕事の依頼をしに来た天使の手により、タイムワ―プをさせられていたのです。
まさに、絶妙のタイミングでした。
「痛い! 肉球噛んじゃったニャン!」
ネコーズは前脚の中の寿司を確認します。
しかし、その中には寿司はありませんでした。
「あれ、寿司が消えているニャン。それと、ここはどこニャンだ?」
ネコーズが周りを確認すると、野原の様な荒野が広がっていました。
こんな場所が日本の名古屋にあるのだろうかと思うほど広大な野原です。