猫様に魅了されているのはアーティストや作家さんも同じ。しなやかな体つき、ミステリアスな瞳、そして気まぐれな仕草。猫様は古くから、その魅力で世界中の人々を惹きつけ、多くの芸術家や文学者に無限のインスピレーションを与えてきました。絵画、文学、音楽に至るまで、色々な形で表現されています。今回は猫様に関連する歴史に残るアートや文学作品を厳選してご紹介します。

文学に刻まれた猫の魂

文学の世界において、物語を動かす重要なキャラクターとして、あるいは人間の内面を映し出す象徴として描かれてきました。

 エドガー・アラン・ポー「黒猫」

ゴシック小説の巨匠、エドガー・アラン・ポーの短編小説「黒猫」は、猫が人間の心の闇を映し出す、強烈な作品です。主人公の「私」は、かつては猫を溺愛する人物でしたが、アルコール依存症に陥るにつれて性格が豹変し、愛猫プルートーに残酷な行為を繰り返します。

 

この作品において、黒猫プルートーは、主人公の良心や罪悪感の象徴として描かれています。猫に対する残虐行為は、主人公自身の人間性の崩壊を鮮やかに示し、読者に恐怖と同時に深い倫理的な問いを投げかけます。ポーは、猫のミステリアスで時に不吉なイメージを巧みに利用し、人間の心の奥底に潜む闇と狂気を浮き彫りにしました。この作品は、猫様が人間の魂を揺さぶる存在として文学に深く刻まれた一例と言えるでしょう。

夏目漱石「吾輩は猫である」

日本の国民的作家、夏目漱石の長編小説「吾輩は猫である」は、人間の世界を猫の視点からユーモラスに、そして時に辛辣に描いた風刺文学の傑作です。名もなき一匹の猫が、居候先の教師宅で人間たちの言動を観察し、その滑稽さや矛盾を独自の視点で語ります。

 

この作品の猫は、人間の営みを客観的に、そして批評的に見つめる「賢者」のような存在です。人間の愚かさや傲慢さを、猫ならではの無邪気さや皮肉を交えながら語ることで、読者は改めて人間社会のあり方について考えさせられます。漱石は、猫の「傍観者」としての特性を最大限に活かし、当時の日本の知識人社会を痛烈に風刺しました。猫が人間社会の鏡となり得ることを示した、示唆に富んだ作品です。

絵画に宿る猫の姿

多くの画家たちも猫様に魅了されてきました。

 ピエール・オーギュスト・ルノワール「猫と子供」

海外に詳しい方だと思っていた猫おばさんですが、この作品は知りませんでした💦オルセー美術館に所蔵されている印象派の巨匠、ピエール・オーギュスト・ルノワールの作品です。(オルセーはまだ行ってないから知らなくて当然か(笑)なんてね)

ルノワールは、猫が子供たちの遊び相手として、また家庭の風景の一部として、自然に溶け込んでいる姿を描きました。そこには、日常の中に存在するささやかな幸福や、生命の息吹が感じられます。猫は、作品に安らぎと生命感を与える存在として、ルノワールの絵画に欠かせない要素でした。彼にとって猫は、人間の生活に寄り添い、家庭の温かさを象徴する存在だったのでしょう。

藤田嗣治の猫の絵画全般

「エコール・ド・パリ」を代表する画家の一人である藤田嗣治(レオナール・フジタ)は、生涯にわたって猫を愛し、数多くの猫の絵画を残しました。彼の描く猫は、独特の「乳白色の肌」と呼ばれる背景に、墨で描かれた繊細な線と、毛並みの質感が特徴です。

 

勉強不足でこの方も知らなかったのですが、こんなパンチの効いたというか、おしゃれな猫狂いのアーティストさんが居たなんて!興味深い。後日深堀りしようっと。

 

ドラ・カルムス《猫を肩にのせる藤田嗣治》藤田嗣治 生誕140周年記念特設サイトより

 

彼の描く猫たちは、時に気高く、時に愛らしく、また時に憂いを帯びた表情で描かれ、見る者の心に深く訴えかけます。彼の猫たちは、単なる動物の肖像画ではなく、画家自身の分身であったり、人間の内面世界を表現する手段であったりしたと言われています。藤田にとって猫は、自身のアイデンティティの一部であり、芸術的インスピレーションの源そのものだったのです。

まとめ

猫様は、古くから人々の生活に寄り添い、そのユニークな存在感で、文学者や芸術家たちに多大なインスピレーションを与えてきました。猫様は時代や文化関係なしに私たちに作さんのインスピレーションを与えてくれます。私自身ももち、くもから得たインスピレーションをイラストにしてます。

良かったら覗いてみてくださいね。

 

 

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右手を挙げてお金を招く猫、左手を挙げてお客さんを招く猫。お店のレジ横や玄関先でよく見かける、あの愛らしい招き猫。

 

私たちに幸運を運んでくれる縁起物として、日本中で深く愛されています。でも、この招き猫がいつ、どのようにして生まれたのか、ご存知でしょうか? その起源には諸説ありますが、招き猫の最も有名な伝説と、その姿に込められた深い意味を紐解いていきます。

招き猫のルーツ、豪徳寺の伝説

招き猫の起源として最も有名なのが、東京都世田谷区にある豪徳寺(ごうとくじ)に伝わる伝説です。

 

その物語は、江戸時代に遡ります。

当時、豪徳寺は非常に貧しく、荒れ果てていました。住職は猫を愛し、たとえ貧しくても決して手放そうとはせず、「お前が何か寺に福を招いてくれたらなぁ」と、飼い猫に冗談めかして語りかける日々を過ごしていました。この猫は、「たま」という名で、住職にとって唯一の家族のような存在でした。

ある日、彦根藩の藩主である井伊直孝(いいなおたか)が、鷹狩りの帰りに激しい雷雨に見舞われ、大きな木の根元で雨宿りをしていました。その時、井伊直孝は、一匹の猫が寺の門前で前足を上げて、こちらに手招きするような仕草をしているのを目にします。不審に思いながらも、その猫に導かれるように寺に入ると、直後に先ほどまでいた木に雷が落ち、命拾いをしました。

この出来事に、井伊直孝は深く感銘を受けました。猫が自身の命を救ってくれたのだと考え、豪徳寺に多額の寄進を行い、以降、豪徳寺は彦根藩の菩提寺となり、大いに栄えることになったのです。住職は、猫の「たま」が寺に福を招いてくれたと感謝し、その死後、手招きする姿の人形を作って祀りました。これが、招き猫の始まりと言われています。

もう一つの伝説、今戸神社の物語

豪徳寺の伝説は有名ですが、招き猫の起源にはもう一つ、心温まる伝説が伝わっています。それは、東京都台東区にある今戸神社の物語です。

 

江戸時代、浅草に住む貧しい老婆がいました。あまりの貧しさから、大切にしていた飼い猫を手放さなければならなくなりました。心を痛める老婆の夢の中に、ある夜、手放した猫が現れ、「私の姿を人形にして祀れば、きっと福を授けるでしょう」と告げました。

老婆は夢のお告げ通りに、猫の人形を作り、店先に置きました。すると、その人形が瞬く間に評判となり、多くの人々が買い求めるようになりました。そのおかげで、老婆は裕福な暮らしを送ることができたそうです。この伝説は、猫が自らの意思で人間に福をもたらそうとした物語として、今も語り継がれています。

招き猫の姿に込められた意味

招き猫は、ただ福を招くだけの縁起物ではありません。その姿や色には、一つひとつ意味があります。

右手を上げている猫

一般的に「お金」や「幸運」を招くとされています。商売繁盛のご利益があるとされ、多くのお店に置かれています。

左手を上げている猫

「人」や「縁」を招くとされています。千客万来、良縁成就のご利益があるとされ、人の集まる場所に置かれることが多いです。

両手を上げている猫

「両手で欲張りに福を招く」として、近年では人気があります。ただし、伝統的には「欲張り」を象徴するため、あまり良いとされてこなかった歴史もあります。

また、招き猫の色にも意味があります。

 

三毛猫: 幸運全般を招く、最も一般的な色です。
白猫: 福を招き、開運をもたらすとされています。
黒猫: 魔除けや厄除けのご利益があるとされ、家内安全を守ります。
赤猫: 病除けの効果があると信じられています。
金猫: 金運向上や商売繁盛の願いが込められています。
ピンク猫: 恋愛成就の縁起物として、現代で人気を集めています。

 

上から3つくらいは見たことがありますが、猫様の色によって意味が違うとは…知りませんでした。

招き猫、現代での役割と広がり

招き猫は、今も私たちの生活に深く根付いています。豪徳寺や今戸神社は、多くの猫好きや観光客が訪れる「招き猫スポット」として知られ、境内には無数の招き猫が奉納されています。また、招き猫は伝統工芸品としても受け継がれています。愛知県の瀬戸や常滑は、古くから招き猫の産地として知られ、職人の手によって一つひとつ丁寧に作られています。

 

さらに、招き猫は日本の文化を代表する存在として、海外でも人気が高まっています。アニメキャラクターやポップアートとしてデザインされた招き猫も登場し、その愛らしい姿は、国境を越えて多くの人々に幸運と笑顔を届けています。

まとめ

招き猫は、単なる縁起物ではなく、様々な意味がこめられていたんですね。アイキャッチに載せたもちくも招き猫、可愛いでしょ(笑)なかなか上手くできたんではないかなって思います。次に招き猫を見かけたら、その愛らしい姿に込められた深い歴史と、幸運への願いを是非思い出してくださいね。

 

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「なぜ、三毛猫にはほとんどオスがいないの?」オスが居ないというのは知ってましたが、その理由を考えたことはありませんでした。あ、漁師さんがオスの三毛猫を欲しがるというのは知ってますが…。皆さんはどうですか?

 

三毛猫は、白、黒、茶色という美しい三色の毛を持つ、日本の代表的な猫様です。その愛らしい姿とは裏腹に、オスが生まれる確率はわずか0.1%と言われています。これには、遺伝子に隠された驚くべき秘密があるようですよ。猫様の毛色を決定する遺伝子の仕組みから、なぜ三毛猫がメスばかりなのか、そしてごく稀に生まれるオス三毛猫の秘密まで、わかりやすく解説します。

猫の毛色を決定する遺伝子の基本

まず、猫様の性別と毛色がどのように決まるかを見ていきましょう。

人間と同じように、猫様の性別はX染色体とY染色体という2種類の性染色体によって決まります。

 

オス猫は、X染色体とY染色体を1本ずつ持っています(XY)。
メス猫は、X染色体を2本持っています(XX)。

 

そして、ここからが重要なポイントです。猫の毛色の中でも、特に黒色とオレンジ色を発現させる遺伝子は、X染色体の上に存在しています。

X染色体がオレンジ色の遺伝子(通称:O遺伝子)を持っていると、猫の毛はオレンジ色になります。
X染色体が黒色の遺伝子(通称:o遺伝子)を持っていると、猫の毛は黒色になります。

このように、性染色体の組み合わせによって毛色は決まっているのです。

三毛猫がメスばかりである理由

では、なぜ三毛猫はオスがほとんどいないのでしょうか?その答えは、「三色を同時に発現させるには、X染色体が2本必要だから」です。

 

三毛猫の毛は、黒とオレンジ、そして別の遺伝子によって決まる白色の3色で構成されています。このうち、三毛猫特有の黒とオレンジの毛色を同時に発現させるためには、X染色体を2本持っている必要があります。メス猫はXXの染色体を持っているため、「黒色の遺伝子を持つX染色体」と「オレンジ色の遺伝子を持つX染色体」を同時に持つことができます。この条件を満たすのは、メス猫だけです。

しかし、なぜ同じメス猫の体の中で、黒色とオレンジ色が混ざった「まだら模様」になるのでしょうか?

 

この謎を解く鍵が、「X染色体不活性化」という不思議な現象です。

猫様の胚が成長するごく初期の段階で、細胞一つひとつにおいて、2本あるX染色体のうちどちらか一方がランダムに「不活性化(働きを止める)」されます。

オレンジ色の遺伝子を持つX染色体が不活性化された細胞からは、黒色の毛が生えます。
*黒色の遺伝子を持つX染色体が不活性化された細胞からは、オレンジ色の毛が生えます。

このランダムな不活性化が全身の細胞で起こることで、黒色とオレンジ色の細胞がモザイク状に混ざり合い、三毛猫特有の美しい模様が生まれるのです。

ごく稀に存在するオス三毛猫の秘密

「でも、ごく稀にオス三毛猫がいるって聞くけど?」
その通りです。オス三毛猫は、通常とは異なる「XXY」という染色体異常を持つ個体がほとんどです。この染色体異常は、人間でいう「クラインフェルター症候群」にあたります。

 

XXYの染色体を持つオスは、メスと同じように2本のX染色体を持っているため、「X染色体不活性化」の現象が起こり、三毛の毛色を発現させることができます。

この圧倒的な希少性ゆえに、オス三毛猫は古くから縁起物とされてきました。特に漁師の間では「船に乗せると遭難しない」という言い伝えがあり、高値で取引されることもあったと言われています。この通説に科学的な根拠はありませんが、危険な海で生きる人々が、特別な命に大きな願いを託した、美しい信仰と言えるでしょう。

 

しかし、この染色体異常を持つオス三毛猫は、生殖能力がなく、不妊であることがほとんどです。また、普通のオス猫よりも体が小さかったり、骨が弱かったりするなど、健康上の問題を抱えることもあります。オス三毛猫が非常に珍しいのは、このような遺伝子の偶然と、その後の生命の神秘的なプロセスによるものなのです。

まとめ

三毛猫様の謎は、性別を決定する染色体と、毛色を決定する遺伝子が理由でしたね。遺伝子の神秘的な組み合わせと、生命の偶然が織りなす奇跡の結果です。そして、オスの三毛猫様がどれだけ希少かおわかり頂けたと思います。もし、オスの三毛猫様に会うことができたら、あなたはかなりラッキーですよ。

 

 

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