校舎3階を出口を求めて2人歩きまわる。しかし出口は見つからない。窓を開け大きな声で助けを呼んでみたりもしたが、この学校は丘の上にあるため周りには建物ひとつ見当たらない(ちなみに俺の家はその丘のふもと)。しかしおかしい。さっき教室で物音をたてた時は用務員らしき人間がいたはずなのに、今はこれだけ大きな声で叫んでも気が付いてくれない。一体どうなってるんだ。
「あとはもう屋上以外行くあてもないわね。」
彼女が言う。しかし屋上への道のりにまたあの何かがいないとも限らない。
「っていうか、あと2時間もすれば夜も明ける。このまま朝までここに留まってる方が安全だろ。」
「いやよそんなの。それじゃさっきのアレに負けを認めたみたいでなんか悔しいじゃない。絶対ここから脱出してやるんだからっ!ほら行くわよっ!」
まあすっかりワクワク顔になっちまって。なんだかゲームか何かと勘違いしてるんじゃないのか。まあでもこの方がコイツらしい。少し安心感を覚えつつ、俺たちは結局屋上に行くことになった。
屋上手前の踊り場。そっと上を見上げる。扉付近にさっきの影は見当たらない。それでも俺たちは細心の注意を払いながら階段を上り、そして屋上へとたどり着いた。
扉をあけると心地よい風が流れてきた。あたりを見渡したがあの影もいない。俺たちはとりあえず校庭側の手すりに向かった。校庭には明日からの改修工事に使われると思われる重機車両が止まっている。当然人影など見当たらなかった。なんとかここから下に降りられないだろうか。何故だか俺は横にいる彼女を見た。
「お前、まさかとは思うが…、こっから飛び降りようとかアホなこと考えんなよ。」
「な…なによ。大丈夫よ、いくら私だってこんなとこから飛び降りたりなんてバカなことしないわ……っ!」
ばつ悪そうに彼女は口を閉ざした。そりゃそうだ。ほんの数時間前に死んでやるなんていってた張本人が今こうして屋上の手すりに手をかけてるんだから。そしてしばらくの間沈黙が続く。
「…………ねえ?」
沈黙を破り彼女が口を開く。
「アンタ、さっきから何も言ってくれないね…。いくら鈍感なアンタでも、いい加減気付いてるんでしょ…。」
教室での出来事。保健室での口論。そして踊り場での反応。全てにおいてフラグ立ちまくりのコイツの行動。これがギャルゲーならハッピーエンド間違いなしだ。しかし状況が状況なだけに今はそこに触れないでおこうとしてた。
「ホント言うとさ、私さっき見ちゃったんだ。アンタのノート。……すごく嬉しかった。アンタも私と同じ気持ちだったなんて、思ってもみなかったから…。」
……ノートの中身。それはなんてことはないたわいもない内容。それでも俺の偽りのない願望。退屈な授業中にふと無意識に書いた相合傘。そこに書いたのは俺とコイツの名前。……ずっと好きだった。高校に入って最初の女友達。コイツはいつも生意気で、わがままで、強引で、だけどどこか憎めなくて、気がつけば一人の女性として意識していた。でもそんな彼女だから、俺の事なんて眼中にないと思っていた。気持ちを知られるのが怖かった。だから俺も邪険に接していた。素直になれない自分がいた。だけど今ならはっきりと言える。俺は、俺は……。
→TO BE CONTINUED…
今度こそ次回で終わらせます。
猫のパパ