器の小さい男の話 高校時代編 No3 | 猫のパパのブログ

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内容ばかりですが(^_^;)
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共学クラス初日も無事に終え、さあ、蝦ちゃんのところにでも行こう、と思ったその時、後ろから声をかけられた。

「えっと、木村くんでいいんだよね。さっきはぶつかっちゃってごめんね。」

さっきの子だ。本当はまだ少しみぞおちの辺りが痛むのだが、ここは我慢だ。何よりこの子かわいいし。大丈夫と返すと彼女はとろけた笑顔で笑った。うん、この子やっぱりかわいい。

「あっ、私、永嶋亜衣って言うの。よろしくね。」

いや、こちらこそと返すと彼女はまたとろけた笑顔で友達のもとへ小走りで行ってしまった。それにしてもわざわざ謝りにくるなんて、いい子だな。普通何もなかったかのようにシカトでおわるよな。もしかすると俺のこと好きだったりして。実は男子クラスのころから俺を見ていて、同じクラスになったから、わざとぶつかってきてきっかけをつくろうとしたとか。・・・この妄想は彼の得意とするものであった。

木村は決して女性にもてるような男ではない。中の下、いや下の上くらいのレベルであろうか。しかし鏡を見ては、俺ってかっこ悪くはないよな。むしろどっちかといえばいいほうなんじゃない、と自分1人で自分の評価をあげているような、そんな男である。中学校の体育祭のフォークダンスで女の子が遠慮気味に手をつないでくると、この子俺のことが好きだから、緊張して手を握れないんだな、なんて考える始末である。実際はキモくって触るのもいやだからなのに...。この前向きな妄想癖、小さい男である。

ともかく、このことを早く蝦ちゃんに教えたい!そう思った彼は一目散に蛯原の下へ向かった。男子クラスに到着すると蛯原もちょうど帰るところだった。そして木村は今日あった出来事を蛯原に話した。事実を得意の前向きな妄想癖でアレンジしながら。蛯原はうらやましそうにその話を聞いていた。木村は完全に浮かれていた。すでに木村の心は完全に永嶋に狂っていた。

つづく