先週。
ひさびさに見つけた村で革のパンツをゲットした、“わたし”こと猫屋敷ねこねこ。
「なんて正月だっ!」
って、ちょっとイラッとしたけど……。
いつ洗濯できるか分からない家出中の身なので、ありがたくもらっておくことに
それにしても。
なんだか、不気味な村です。
「おいちょかぶに手を出したばっかりに……」
ん?
鐘(かね)の音……?
「…………」
ああ、ごはんの時間か
「でも、がまんがまん」
わたしは他の人たちといっしょに食べるのが嫌なので、いつもごはんの時間がおわるギリギリに食堂に行くことにしています。
きょうは鐘(かね)があるので、これを見て時間が経つのを待つことにします
じぶんで動けない人には、部屋までごはんが運ばれてきます
その匂いとのたたかいも大変です!
「ねこねこちゃん、おなか空いてないの?」
「うん。あとで食べる」
うそです。本当はおなかペコペコです
でも。
「他の人たちといっしょに食べたくない」って本当のことを言ったら、陰で馬鹿にされるかもしれないから毎回うそをつきます。
…………
……
あ。
みんなが食堂からもどってきた
写真でわたしにぶつかっているオバサンは、いつもわざとぶつかってきます
写真の右に写ってる親子は、わたしにお見舞いが来ないことを馬鹿にしてます
…………。
でも、わたしは無視。
早く行かないと、ごはんの時間がおわってしまうのです
「402号室で死んだ猫屋敷です」
「もうちょっと早くくるようにしてね」
食堂のひとに手首に巻いたバーコードを読み取ってもらうと、トレイに乗ったごはんを出してもらえるシステムです
…………。
病院食は味がうすいので、わたしはいつもこっそり塩をかけて食べています
…………
……
まんぷくまんぷく。夢心地(ゆめごこち)です
このあとは、いつもどおり図書室で借りた本を読みます
あら?
「アイアンゴーレムだ。この病院にも、ちゃんと守護神いるじゃん」
って……。
アイアンゴーレム……、柵の中に捕まってる?
もしかして……。
先週のヒツジたちも、飼われてるんじゃなくて……捕まっていた?
…………
……
「何があったの?」
「…………」
「ねえ、どうしたの?」
「助けてぶー」
柵の中に、ブタとオオカミとアイアンゴーレム……。
だれに捕まったの?
っていうか……。
わたし、病院にいなかった?
…………。
「たすけて~! たすけて~!」
「え?」
「たすけて~! たすけて~!」
「え? え?」
あ。
あのひとだ……。
「たすけて~! ベッドの下に誰かいます~」
「ベッド……? え? ちょっと待って~」
「たすけて~。たすけて~」
「あれ? どこ行っちゃったんだろ」
つづく
【おまけ】
Aimer 『I beg you』