スローライフ~第五章:自由のために 09 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

 僕は、五十音順に生徒の名前を呼ぶ。
 相変わらずHRだというのにみんな好きにしている。
 僕の科学の授業もこんな感じ。
 科学は受験には関係ないからね。
 素直に聞いてくれているのは、透くんと静香さんだけかな。
 海夜さんに至っては、茶々を入れてくることもある。
 百道くんは、アンバランサーを作らせろとうるさいし……
 もう、ここまでくると学級崩壊に近いね。
 英語や数学に関しては、みんなまじめに聞いている。
 なんだ……
 もう、あれかな。
 僕は嫌われているんだな。
 僕は、静かにため息をついた。
「なんや?センセイ。
 ため息やなんて失恋でもしたんかいな?」
 海夜さんが、相変わらず僕に茶々を入れる。
「お。教師のくせに失恋か?」
 百道くんに至っては、もやは意味不明だ。
「教師の前に人間だからね。
 失恋くらいするさ。
 でも、僕は既婚者だよ?」
 僕が、そう言うと百道くんが驚く。
「童貞じゃなかったのかよ?」
「そっちの驚き?」
 僕は、もはやはため息すら出ない。
「そいつ、子持ちだ」
 茂くんが、そう言うと百道くんがさらに驚く。
「この裏切り者が!」
 百道くんが、がっくりと肩を落とした。
「子供っていくつなん?」
「4つかな」
「おお、かわええ歳の頃やん。
 今度紹介してーなー。
 男の子?女の子?」
「女の子だよ」
「うあー。
 ええなぁー」
 海夜さんが、呟く。
「俺は会ったぞ?
 なかなか素直でいい子だった」
 滋くんが、得意気に笑った。
「ええなぁー」
 海夜さんが、羨ましそうに僕の方を見た。
「で、自由ちゃんは大丈夫なのか?
 きとんと説明できたのか?」
 滋くんが、心配そうにそう言った。
「わかったのかわかってないのかわからないけれど。
 説明はしたよ。
 普通の生活を継続したまま治療を受けることになったよ」
「そうか。
 つらいな」
 滋くんが、そう言ったところでチャイムが鳴った。
「じゃ、僕はこれで戻るね。
 きちんと授業は受けてよ?」
 僕は、そう言い残して教室を出た。