ジンクス∞漁猫~最終章:TRY AGAIN05 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

 夜が来る。
 静かなる夜に、女の子がふたり僕の家に訪れる。
 宮崎さんと蜜柑ちゃんだ。
 川名さんは、既に僕の家で晩御飯を作っていてくれている。
「斉藤君は、いつもこんな美味しそうなものを食べているの?」
 宮崎さんが、そう言って唐揚げをひとつ摘む。
「あー。
 峰子先輩だけずるですぅ」
 蜜柑ちゃんがそう言って唐揚げをひとつ摘んで口に運ぶ。
「……どうかな?」
 川名さんが、心配そうな表情でふたりの方を見た。
「美味しいわね」
 宮崎さんが、そう言うと蜜柑ちゃんがもういっこからげを摘んだ。
 そして、もぐもぐと唐揚げを食べている。
「美味しいって目が言っているよ」
 僕は、そう言って小さく笑った。
「ですね、嬉しいです」
 川名さんも笑った。
「相変わらずふたりはラブラブねー」
 宮崎さんがため息をつく。
 蜜柑ちゃんが唐揚げを食べる。
「蜜柑ちゃん、そんなペースをあげて食べるとごはん食べれなくなるよ」
 僕がそう言うと蜜柑ちゃんは、唐揚げを飲み込んでこう言った。
「私のお腹は、ブラックホールですから」
「そ、そっか……」
 僕は再び苦笑いを浮かべた。
「では、ご飯をよそうね」
 川名さんは、そう言ってお茶碗にご飯をよそってくれた。
「あ、私大盛りでお願いします!」
 蜜柑ちゃんが、嬉しそうに笑う。
「はい、わかりました」
 川名さんが、頷くと本当に蜜柑ちゃんのお茶碗にご飯を大盛りに入れた。
「ありがとうございます!」
 蜜柑ちゃんの目が輝く。
「蜜柑ちゃんって意外と食べるんだね」
 僕が、そう言うと蜜柑ちゃんが首を傾げる。
「意外ですか?」
「うん。
 小柄でちっちゃいからあんまり食べるイメージないよー」
「私、結構食べますよー。
 鶏さんなら一匹まるまる食べれる気がします」
「鶏一匹の重さって、2~3キロくらい?」
「それくらいならペロリです」
「凄いわね……」
 宮崎さんが目を丸くしている。
「では、軽く食べて練習しましょう。
 いっぱい食べるとあとでバテますので……」
 川名さんが、そう言うと宮崎さんが頷く。
「そうね、ちゃっちゃっと食べちゃいましょう」

 そして、僕たちは晩御飯を食べ終えると防音室へと向かった。
「防音室なんてあるの、一先輩の家くらいですよね」
 蜜柑ちゃんが、そう言って目を輝かせている。
「うん。
 亡くなった父さんと母さんが作ってくれたんだー」
「あ……ごめんなさい」
 蜜柑ちゃんが小さく謝る。
「え?どうしてあやまるの?」
 僕の問に蜜柑ちゃんが答える。
「だってつらいことを思い出させてしまったから……」
 僕は、首を横に降った。
「大丈夫だよ。
 もう乗り越えたから……」
「でもでも、なんか申し訳ないです」
「気にしなくていいよ。
 今、気にしなきゃいけないのは歌だよ」
「はい。
 突撃卒業ソングですよね」
「そそ、今はそれに集中しましょ」
 宮崎さんが、そう言って蜜柑ちゃんの頭を撫でる。
「はい!」
 そして、僕たちは歌の練習をはじめた。