「それは、えっと……」
川名さんが困った顔をする。
ってか、困るのか。
これは喜んでいいのだろうか?
それとも悪い意味なのだろうか?
それを見かねた宮崎さんが、僕の頭をドラムスティックで軽く叩く。
「貴方まで困った顔をしてどうするのよ?
男はきっぱりと決めないと!」
「決めるって何を?」
「本気で言ってます?」
蜜柑ちゃんが、呆れた顔で僕の方を見る。
「え?」
みんなが何を言いたいのかわかる。
だけど……僕にはまだ勇気はない。
「男はドカンと!」
葉月先輩の目も真剣だ。
このタイミングなのかな?
本当にいいのかな?
川名さんの目もどこか真剣だ。
なら、決めよう。
今なのなら今決めよう。
「川名さん」
「はい」
僕の鼓動が早くなる。
「好きです」
「はい」
返事されちゃった。
これってOKってことなのかな?
それともスルーされたってこと?
そんなことを思っていると宮崎さんが言葉を放つ。
「はぁ。
好きだからどうして欲しいか言わないと……」
「あ、付き合ってください」
「……はい!」
「え?」
「一さんとお付き合いします」
「いいの?」
「ダメ……なのですか?」
川名さんが悲しそうな表情をみせた。
「ダメじゃないです!
お付き合いしてください!
何処へでもついていきます」
「おててつないで?」
川名さんが手を出す。
「う、うん」
そして、僕はその手を握る。
ただそれだけなのに幸せになれた気がした。