ジンクス∞漁猫~第四章:悲しみのワルツ25 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法

「さて……
 僕もろうそくの番をしようかな」
「そういえば、貴方たち家族ぐるみで付き合いがあったんだったわね」
「……うん。
 亡くなった父さんと母さんが、美紗の両親と同じ職場に働いていたんだ。
 それで、僕たちは家も近所だしよく一緒に留守番していたんだ」
「そっかー。
 幼馴染ってヤツね。
 私には、そう言う人いないから羨ましいわ」
「良いモノだよ」
「そうね……
 じゃ、私は、帰るわね」
「うん。
 今日は、ありがとうね」
 宮崎さんは、苦笑いを浮かべると僕に手を振りその場を離れた。
 さて、今日はまだ長いぞ……
 僕は、ゆらゆらと動くろうそくの光を見つめた。
 叔父さんも叔母さんも疲れているようなので、休んでもらっている。
 美紗と護の合同御葬式。
 遺影には、笑顔でいる2人も、遺体には表情はない。
 当たり前のことなんだけどね。
 でも、心のどこかでは、これがドッキリで2人が笑顔で現れる。
 そんな気がしてならなかった。
 だけど、それはない。
 何故ならふたりは、死んでいるのだから……
 もう笑わない。
 それが、死ぬと言うこと。
 もう怒らない。
 それが、死ぬと言うこと。
 もう動かない。
 それが、死ぬと言うこと。
 悲しいけれど、どれも事実。
 悲しいけれど、これが現実。
 僕は、ゆらゆらとゆれるろうそくの火をただ見つめた。
 炎が消えないように……
 炎が消えないように……
 炎が消えないように……
 気がつけば、朝が来ていた。
「一君、ありがとう。
 君も少し休んだ方が良い……」
 叔父さんが、僕に声を掛ける。
 僕は、頷くと外に出た。
 外の空気を一呼吸。
 冷たい空気が僕の心と肺を満たす。
 夏なのにね。
 空気が冷たいんだ。
 どうしてだろうね……
 ただ虚しく蝉が鳴いている。
「朝早くからよく鳴けるな……」
 僕は、呟くとこんな言葉が帰ってきた。
「生きるために必死なんですよ」
 振り返るとそこには、川名さんが立っていた。
「早いね……」
「一さんこそ、早いじゃないですか……」
「僕は、ずっとここに居たから」
「目にクマが出来てますよ」
「……うん」
「……少し、眠ってください」
「いや、いいよ。
 外の空気を吸ったら眠気が覚めたから」
「そうは見えませんよ?」
「……ありがとう。
 大丈夫だから……」
「大丈夫じゃないです。
 一さんの心の悲鳴が聞こえます」
「大丈夫……」
僕は、そう言いつつも川名さんは心配そうに僕の方を見つめていた。