「さて……
僕もろうそくの番をしようかな」
「そういえば、貴方たち家族ぐるみで付き合いがあったんだったわね」
「……うん。
亡くなった父さんと母さんが、美紗の両親と同じ職場に働いていたんだ。
それで、僕たちは家も近所だしよく一緒に留守番していたんだ」
「そっかー。
幼馴染ってヤツね。
私には、そう言う人いないから羨ましいわ」
「良いモノだよ」
「そうね……
じゃ、私は、帰るわね」
「うん。
今日は、ありがとうね」
宮崎さんは、苦笑いを浮かべると僕に手を振りその場を離れた。
さて、今日はまだ長いぞ……
僕は、ゆらゆらと動くろうそくの光を見つめた。
叔父さんも叔母さんも疲れているようなので、休んでもらっている。
美紗と護の合同御葬式。
遺影には、笑顔でいる2人も、遺体には表情はない。
当たり前のことなんだけどね。
でも、心のどこかでは、これがドッキリで2人が笑顔で現れる。
そんな気がしてならなかった。
だけど、それはない。
何故ならふたりは、死んでいるのだから……
もう笑わない。
それが、死ぬと言うこと。
もう怒らない。
それが、死ぬと言うこと。
もう動かない。
それが、死ぬと言うこと。
悲しいけれど、どれも事実。
悲しいけれど、これが現実。
僕は、ゆらゆらとゆれるろうそくの火をただ見つめた。
炎が消えないように……
炎が消えないように……
炎が消えないように……
気がつけば、朝が来ていた。
「一君、ありがとう。
君も少し休んだ方が良い……」
叔父さんが、僕に声を掛ける。
僕は、頷くと外に出た。
外の空気を一呼吸。
冷たい空気が僕の心と肺を満たす。
夏なのにね。
空気が冷たいんだ。
どうしてだろうね……
ただ虚しく蝉が鳴いている。
「朝早くからよく鳴けるな……」
僕は、呟くとこんな言葉が帰ってきた。
「生きるために必死なんですよ」
振り返るとそこには、川名さんが立っていた。
「早いね……」
「一さんこそ、早いじゃないですか……」
「僕は、ずっとここに居たから」
「目にクマが出来てますよ」
「……うん」
「……少し、眠ってください」
「いや、いいよ。
外の空気を吸ったら眠気が覚めたから」
「そうは見えませんよ?」
「……ありがとう。
大丈夫だから……」
「大丈夫じゃないです。
一さんの心の悲鳴が聞こえます」
「大丈夫……」
僕は、そう言いつつも川名さんは心配そうに僕の方を見つめていた。