ジンクス∞漁猫~第四章:悲しみのワルツ24 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法

「……でも、僕らだけで?」
 僕が、そう言うと川名さんは、そっと僕に携帯を見せた。
「葉月先輩と蜜柑ちゃんに今、メールします。
 ふたりともきっと来てくれます!」
 川名さんが、力強く言った。
 川名さんが言った通り、2人は、すぐに来てくれた。
 と言うか、葬儀に来ていたみたいだった。
 ふたりとも楽器を学校に置いていたので、すぐに音楽を弾ける環境が整った。
 周りの人たちは、驚いた顔をしている。
 それは、そうだろう。
 何せ、葬儀でバンドをするのだから……
 選曲は、荒井由美さんの“ひこうき雲”
 川名さんが歌い。
 僕がギターを弾き、みさき先輩がキーボード。
 蜜柑ちゃんが、ベースを弾く。
 葬儀が静まり返る。
 僕たちは、静かな雰囲気のなかで曲を奏でた。
 野次を飛ばされるかと思った。
 だけど、みんな最後まで聞いてくれた。
 川名さんの声が、心に響く。
 そして、みんな涙を流した。
 だけど、僕は泣けなかった。
 僕の心には、ぽっかりと穴が空いたように何の感情も生まれなかった。
 そして、葬儀が終わった。
 葬儀が終わると、どっとしたに疲れが僕を襲う。
「お疲れ」
 宮崎さんが、僕に声を掛けてきた。
「宮崎さん、来てたんだ」
「一応、クラスメイトだしね」
「そっか」
「貴方、私にはホント冷たいわね」
「普通だよ」
「ふーん」
「……なんか用事でもあるの?」
「ライバルの泣き顔を見に来たと言ったら怒るかしら?」
「泣かないよ」
「そう?」
「流れないんだ……
 涙が……悲しいはずなのに涙が流れないんだ」
「貴方は泣いているわ」
「え?」
「貴方の心が、泣いているわ。
 痛い、痛いってね」
「……君からそんな言葉が出るとは思わなかったよ。
 思ったより詩人なんだね」
「失礼しちゃうわ」
 宮崎さんは、苦笑いを浮かべた。
 僕もつられて苦笑いがこぼれた。
 ああ、僕は、まだ笑えるんだ。