ジンクス∞漁猫~第四章:悲しみのワルツ26 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法

「無理しないでくださいね」
 川名さんが、ぎゅっと僕の手を握り締める。
「ありがとう……
 川名さんって……」
「なんですか?」
「お母さんみたい」
「え?」
「川名さんといるとなんか懐かしい感じがするんだ」
「そうですか……
 そんなこと言われたのは、初めてです」
「僕もこんなことを言ったのは、初めてだよ」
「私、家族ってあまりわからないので、そう言われるとむず痒いですね」
「そっか……
 じゃ、たまにお母さんって呼んでもいい?」
「それは嫌です」
 きっぱりと断られた。
「……残念」
僕は、ガックリと肩を落とした。
「……お互い、いい家族が持てるようになりたいですね……」
「……そうだね」
「はい」
 僕は、ゆっくりとベンチに座った。
「川名さんも座らない?」
「はい。
 座ります」
「……昨日は、ありがとうね」
「え?」
「歌ってくれたからさ……
 たぶん、美紗も護も喜んでいると思うよ」
「そうだといいですね」
「うん」
「一君、ここに居たんだね」
 美沙のお父さんが、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「あ、叔父さん」
「部屋を用意したから、そこで休んでくれ……
 少し寝た方が良いぞ」
 叔父さんが苦笑いを浮かべる。
「でも……」
「私も寝た方が良いと思います」
 川名さんが、そう言って立ち上がる。
「でも、川名さんは?」
「私は、大丈夫です。
 家で少し寝ましたから……」
「そっか」
「では、また午後にも来ますね」
「うん」
 僕は、そう言って川名さんに手を振った。
 叔父さんに案内されたのは、小さな個室だった。
 テレビとテーブルに小さな冷蔵庫があり片隅に布団があった。
「朝食にサンドイッチを買って冷蔵庫に入れてあるから、よかったら食べてね」
「ありがとうございます」
「んじゃ、おやすみ」
 叔父さんは、そう言って部屋を出た。
「そう言えば、お腹すいたな……」
 僕は、ぼそり呟くと冷蔵庫を開け、サンドイッチを取り出した。
 そしてサンドイッチをひとくち食べる。
 味がしなかった。
 なんでだろう?
 心が空っぽになってるかな?
 僕は、そんなことを思いながらサンドイッチを完食した。
 布団の中に入ると僕は、すぐに眠りに落ちた。