ニートライター亜金の事件簿・改~第一章:千春の死01 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法


2014年1月31日・朝の詩空家、リビング


新年も終わり、少し落ち着いた日々。
退屈な日常。
平凡な日常。
それは、特にいいことではない。
何故ならそれは、暇を意味するからである。
詩空 亜金(しそら あきん)も例外ではなかった。
「亜金……
 今月幾つ仕事した?」
そう言ったのは、亜金の直属のメイドである多摩月 玉藻(たまづき たまも)である。
「1件……」
「収入は?」
「5000円……」
玉藻が、目を細めメガネを上にあげる。
「ほう……」
「ほう……」
亜金も真似して自分のメガネを上にあげる。
「ご主人様」
「ケンカ売ってる?」
玉藻の声が尖っている。
「滅相もございません……」
「はぁ……
 全く情けない。
 おぬしは、いつまで剛毅様に甘える気なのだ?」
詩空 剛毅(しそら ごうき)。
仕事の無い亜金を心配し財産を全て亜金に譲ることを遺書に残して病気で亡くなった。
また、それと同時に優秀なメイドで、亜金の幼馴染でもある玉藻に亜金の世話を頼んだのだ。
「そりゃ、俺だって自立したいと思っているけどさー
 仕事ないじゃん?
 派遣もやったけどバイトもやったけど続かないじゃん?」
「それは、亜金の忍耐が足りないからだ!」
「うぅ……
 言い返せない」
「だいたいお前ってヤツは!!」
玉藻が、そこまで言ったあと亜金のiPhoneがメロディーを奏でる。
「俺のiPhoneが光って唸る!
 玉藻から逃げろと轟き叫ぶ!」
亜金は、そう言ってiPhoneを持って自分の部屋に逃げた。
「玉藻ちゃん、いつもごめんねぇー」
亜金の母親の霧がそう言って謝る。
「いえ……
 亜金のことは、剛毅様に生前頼まれていますから……」
玉藻も苦笑いを浮かべながら答える。
「本当にアイツは、いつになったら真面目に働くのやら……」
亜金の父親の紅(くれない)も渋っていた。
「貴方のコネで、どうにかできない?」
霧が、そう言うと紅もため息をつく。
「今は、そう言うことが出来ないんだ……
 出来ていたら叩きこんでいるよ。
 まぁ、本人の意思次第だ……
 アイツにもいい人が出来ればいいのだが……」
紅は、そう言って玉藻の方を見る。
「え?」
霧も玉藻の方を見る。
「ウチのお墓に一緒に入らない?」
霧は、そう言って笑う。
「そ、それはどういう……?」
玉藻は、少し焦りながら尋ねた。
「亜金のお嫁さんになってくれないか?」
紅も、そう言って笑う。
「いえ、そんな滅相もない……」
「じゃ、お願い!
 一緒に食事とかもしてくれ……
 ひとり家族が減ったからどうもあの空きスペースが気になってしまって……」
「いえ、そんな私風情が皆様と食事など……」
玉藻は、少し困っていた。
「じゃ、玉藻ちゃんを女として見込んでのお願い!」
紅も霧も玉藻に手を合わせて頼んだ。
「わ、わかりました……
 そこまでお願いされては断れません」
「じゃ、決定ね!」
霧は、嬉しそうに笑った。
「で、その亜銀(あぎん)様は、朝早くにどちらへ?」
玉藻の問いには紅が答えた。
「結婚式の準備で忙しいそうだ。
 そして、今日から新居での生活だそうだ」
「そうですか……
 寂しくなりますね」
「まぁね。
 こればっかりは仕方がないさ」
紅はそう言ってコーヒーを一口含んだ。