朝の8時……
由香さんから電話がかかってきました。
「尾上さんが自殺した」
「え?」
俺は耳を疑いました。
「だから、尾上さんが自殺したんだって……」
「……え?」
由香さんが何を言っているのかがわからない。
「今、病院に向かってるの……」
由香さんの声は、涙で震えていた。
「猫さんも来て……」
「……わかりました
どこの病院ですか?」
「○×の○×病院」
俺は、その病院をメモして、インターネットで調べてプリントアウトした所で南さんから電話がかかって来た。
「猫さん!
尾上さんが自殺したって連絡来てるよね?」
「はい」
「今どこに居る?」
「家です、今から病院に向かう所です」
「丁度良かった、今、仕事を終えた所で、私も今から病院に向かう所なんだ
枚方市駅付近に車を持ってくるから一緒に向かおう」
「ありがとうございます」
俺は、電話を切るとすぐに家を出て枚方市駅に向かった。
枚方市駅のバスターミナルに向かうと車のクラクションが鳴った。
振り返ると、南さんが車の運転席に座っていた。
「南さん……」
「さぁ、早く病院に向かおう」
南さんは、そう言うと車を走らせて○×病院に向かった。
病院に着くと、由香さんが待合室で、今にも死にそうな顔で座っていた。
「由香さん……」
由香さんは、俺の姿を確認すると俺の胸に飛び込んできました。
「尾上さんが……
尾上さんが……」
俺は、ただ由香さんを抱きしめる事しか出来ませんでした。
「尾上さんは?」
由香さんが落ち着いた頃を見計らって、南さんが由香さんに尋ねました。
「今は、昏睡状態……
私が、尾上さんの家に遊びに行ったら薬を飲んでいて……」
「そっか……
辛かったね……」
由香さんは、コクリと頷きました。
そして、近くに居た男が俺に近づいてきた。
杉山だ。
「お前が全て悪いんだ!?」
杉山は、そう言い残すとその場を去りました。
南さんも由香さんが杉山を睨みかえすと、杉山は舌打ちをした後、その場を去って行きました。
「猫さん、尾上さんと何かあったの?」
「特には……」
「本当か?約束とかあったんじゃ……」
「約束と言えば、今日、夜景を見に行く約束をしていました」
「そうなのか?」
「何か特別な場所があるみたいで……
今日は、そこに連れて行ってもらう予定でした」
「そうか……」
南さんは、そう言うと肩を落として席に座った。
「尾上さんには会えないの?」
俺の問いに、由香さんは、涙を流しながら答えました。
「今は、家族の方以外、面会謝絶だそうです……」
「命の方は大丈夫なのか?」
「うん
命には別状は、無いって……」
「そっか……
とりあえずは、よかったよ」
「……」
きゅるるるる……
「ごめんなさい」
由香さんのお腹の音がなりました。
「今何時だ?」
南さんは、そう言うと自分の時計を確認した。
「うわ、もう
12時じゃないか……」
「二人とも朝は……」
俺達は首を横に振りました。
「じゃ、近くのマックに行こう」
「……うん
でも……」
「どうした、由香?」
「怖いから猫さんにへばりついていても良い?」
「う……
ん?」
「いいから、車に向かうぞ……」
南さんは、そう言うと車を発進させました。
そして、マクドに向かった後、それぞれの家に送って貰って今日は解散。
その後も、結局尾上さんの事で頭がいっぱいになり、他の事に集中できませんでした。
自殺するつもりなら、約束なんてしないはずだ……
それ以上の何かがあったのか……
俺には何もわからなかった。
※この物語は、フィクションです。
実在する人物・団体とは、一切関係ありません。