静かな風が流れる。
夜の街、人気の少ない場所。
そこに奴は居た。
男の名前は、【竹内 素史】。
忘れ去られた神、【元無極躰主大御神(もとふみくらいぬしのおおみかみ)】。
その末裔。
素史は、神の座を狙っている。
かつては森羅万象を司る大神であった。
しかし、今、元無極躰主大御神を信仰するモノは数少ない。
その為、現在は力の殆どを失っていた。
素史には、選択肢が二つあった。
一つは、自然の摂理において、静かに消える事。
もう一つは、他者の魂を喰らい、生き延びる。
素史は後者を選んだ。
素史は若い娘を、暗闇に追い込むと、抵抗する娘を振りほどき、
静かに口付けをした。
若い娘の肌は静かに水分を失い、そして服のみが残った。
『こんな小娘の魂では、そんなに持たないな・・・』
こうして、素史に魂を吸われたモノは、魂を吸われたモノの関係者
及び記録は全て消え、【最初から存在しなかった事】にする事が出来た。
今までに、素史はこうやって魂を喰らってきた。
だから、事件になった事等なかった。
素史は静かに眼を閉じ、精神を集中させると、ニヤリと笑い。
『息の良い、魂見つけた。』
と呟いた。