呼吸についての話、パートⅡです

まず、『痙攣性発声障害』について・・・
これは、“神経” の病気です

“精神” と間違われやすいのですが
ザックリ言って・・・
“神経” は見えるもの
“精神” は見えないもの です。
いわゆる「心の病」は「精神科」の範疇ですが
「痙攣性発声障害」は「耳鼻咽喉科」の範疇です。
ただ、発声器官に器質的な異常はなく
また運動麻痺なども見られないため、正しい診断が下されにくく
「精神的なもの」と見なされてしまうケースが多いのが問題。
かつ、「痙攣性発声障害」と診断されても
適切な治療が行える機関が少ないという現状も、大いに問題。
「痙攣性発声障害」という病気について正しい理解が深まり
苦しんでいらっしゃる方々が、少しでも楽になれる方法が
もっともっと研究されることを願っています。
次に、私の提唱する『呼吸三原則』について・・・
1:「呼」が先
肺呼吸をする動物は、誕生の瞬間、息を吐くことで
肺呼吸が始まります(胎内では、言わば「えら呼吸」)。
ヒトの場合、「おぎゃ~」と泣かなければ、お産婆さん
(今は、助産師あるいは産科医師)が、赤ちゃんを叩いてでも
泣かせて、呼吸を促しますね。
「産声を上げる」とは、まさに「誕生」を意味することば。
日本語って素敵だなぁと思います。
そして、亡くなるときは、息を吸って終わるのです。
私はこれまで、2匹の飼い猫を自分の手の中で見送り
その瞬間を見届けましたが、まさしく息を “引き取り”ました。
いつの時代に「息を引き取る」と言う表現が確立したか、私は
存じませんが、婉曲表現が好きな日本人のこと、その状況を
ちゃんと観察していたからこそ生まれた表現だと思います。
ここにも日本語の素晴らしさを感じます
2:鼻から(吸う)
息を吸うときは、鼻から吸うよう意識しましょう。
ちなみに、「鼻呼吸」で検索をかけると、何万件もの記事が
ヒットします。 その多くが「鼻呼吸のメリット」です。
色々な効能はそちらにお任せすることとして、私がかつて学び
今も講座でお伝えしている鼻の役割について、お話しします。
①ヒーターの役割 (加温)
外界の空気は、人間の身体にとっては冷たいもの。
それを適度に温め、身体にやさしい空気にしてくれます。
②スチーマーの役割 (加湿)
外界の空気は、人間の身体にとっては乾燥しているもの。
適度に湿り気を加え、身体にやさしい空気にしてくれます。
③フィルターの役割
①②が「加える」機能であったことに対して、③は「取り除く」機能。
除菌まではいきませんが、ある程度の汚れを吸着してくれます。
(汚れた空気の中に長時間いると、鼻の中が汚くなりますよね)
口で吸うと、身体にとって「冷たい・乾いた・汚い」空気を
いきなり取り入れてしまうことになります。
運動時など速いガス交換を必要とする場合、口呼吸は有効ですが
その分、平常時に口呼吸をすると、吸い過ぎてしまうこともあります。
3:八分目
食べ過ぎが良くないのと同様、吸い過ぎも良くありません。
まず、苦しくなります。
吸った息をこぼさないようにと、余計に力が入ります。
たっぷり吸うのは、レントゲン撮影の時だけにしておきましょう。
プロの歌い手や噺家・講談師などのように、長いフレーズを一息で!
などと求められているのなら別ですが、普通の場合は
「足りなければ、あとから吸い足せば良い」くらいの気持ちでOK。
前回、腹式呼吸をキチンと身につけるのは簡単ではない! と
申しました。 でも、腹式呼吸そのものは、それほど難しくありません。
赤ちゃんのときは、どなたも腹式呼吸だったはず。
そして、上記「三原則」を守ってゆったりと呼吸をして頂くと
自然に腹式呼吸になっていることが多くあります。
腹式呼吸は、呼吸に合わせて文字通りお腹が動くのですが
動かそうとするとかえって良くありません。 また、
胸を動かしてはならない! などと考える必要はありません。
身体は連動するものです。
楽な呼吸で楽な発声を!
そこから良い声・良い話・良い朗読が生まれます

そうそう・・・明日は藤枝校で「良い声で話しましょう」という
一日講座があります

「声は生まれつきのものと諦めていませんか。
からだの使い方次第でもっと良い声を出すことができます。
あなたの良い声を見つけましょう。」
というのが、講座の趣旨デス
頑張ります
