前回の記事で、「Toshlさんが元妻の影響まで洗脳と表現され、「洗脳されたから脱退した」と誤解・単純化され、非難されがちなのも、この言葉が軽く使われていることによる弊害ですね。」と書きました。

 

YOSHIKIさん・X JAPAN離れやバラエティー出演など、Toshlさんが自分の意に沿わない行動を取ると、すぐに「また洗脳されているのか」という発想に到るのも、同類と言えそうですね。

そういう方の脳こそ大丈夫なのだろうかと危ぶんでしまいますが。

ネタとして言っている方に対しても、そのセンスのなさに逆に心配になってしまいます。

 

なお、YOSHIKIさんを擁護するために、「精神的に苦しんでいたからといってすべての人が洗脳される訳ではない。もっと酷い目に遭っても平気な人もいる」と言う人がいますが、重要なのは因果関係ですね。

 

いじめ被害者が全員自殺する訳ではないからといって、「いじめ自殺は自己責任。もっと酷い目に遭っても平気な人もいる。加害者に罪はない」ということにはなりませんので。

 

また、「もし自分なら~」「他の人なら~」という風に比較するなら、Toshlさんが精神的苦痛を受けていただけでなく、巧妙な結婚詐欺的状況に置かれていたことも忘れてはいけませんね。

カルトであること隠して信頼関係を築き、断れない状況を作ってから相手を引きずり込む勧誘方法は、親鸞会が有名です。

 

比較するにしても、まったく同じ状況などありませんし、運の要素も大きいです。
(それともToshlさんを非難する方は、当時のToshlさん以上の苦境の中で芸能人として活躍している最中なのでしょうか……?)

 

仮に絶対に騙されない人がいたとしても、被害に遭った人を非難できないのは言うまでもないことですね。

Toshlさんの場合は幹部として加害行為を働いた訳ではなく、X JAPANだった過去を否定した発言も、ファンが激しく非難するのは客観的とは言えません。

 

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それでは、ここからYOSHIKIさんによる洗脳いじりそのものについて見ていきます。

 

「YOSHIKI CHANNEL」(2017年1月25日)

「【第2部〜】YOSHIKI緊急凱旋帰国 YOSHIKI CHANNEL

伝説対談SP 第10弾 ~YOSHIKI×INORAN×MUCC緊急生出演~」

 

最近のYOSHIKIさんは、自分探しの旅としてアリゾナ州のセドナに行って息抜きした。

そこで先住民族のシャーマンから様々なアドバイスを受けた。

しかし、帰国後に心配になって、「俺もしかして洗脳されてないかな?」と、一昨日会った「その手(洗脳)の専門家」のToshlさんに相談した。

「洗脳に関してはToshlは先輩だからね(笑)。後輩になりたくねえ(笑)」

「Toshl has a master degree of brainwashing.」

 

私は未見ですが、SNSなどによると、こうした内容だったようですね。

まだゲストが登場する前で、司会の荘口彰久さんがGEORGEさんに話を振ったけれど、特に反応はなかったそうです。

 

後述する「YOSHIKI CHANNEL」(9月4日)、「しゃべくり007」、「ダウンタウンなう」では、Toshlさん不在での洗脳いじりという点で、奇跡の夜との違いがありました。

 

しかし、YOSHIKIさんは当初から他の人々の前で、その場にいないToshlさんをネタにしていたのですよね。

反応が良かったことでエスカレートした面はあるでしょうけれど、そもそもタガが外れていたようです。

 

自分に、若しくは自分にも責任があるのに、他人事のように笑い話にする無神経さ。

「HYPER JAPAN Festival 2015」(現地時間7月10日~12日)インタビューでの、Toshlさんへの「血出しながら歌ってなかった?」発言を思い出しますが、これについては奇跡の夜最終日(7月17日)の項目で書きます。

 

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発端となる横浜アリーナでのMCは、以下の通りでした。

 

「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle 〜奇跡の夜〜 6DAYS」

「横浜アリーナ公演 初日」(7月14日)

 

YOSHIKI:違う国に行ってた感じがする。

Toshl:違う国というか違う次元ね。

YOSHIKI:何とか星みたいな。

Toshl:そうそうそう。何星だっけ?

YOSHIKI:洗脳星みたいな。

Toshl:何かありそうだよね。

YOSHIKIToshl冥王星、天王星、

Toshl:こらっ! 笑い事にするな。

YOSHIKI:逆のいじめ、逆いじめだよ。

 

「サービス精神旺盛なYOSHIKIは「他に何聴きたい?」とリクエストを募り始め「(コンサートタイトルの)『奇跡の夜』が『いじめの夜』になってきたよ」と悪ノリ。Toshlが「いじめられるの嫌いじゃないよ。嫌いだったらYOSHIKIと46年も付き合えないしね」とやり返すと、「10年くらいブランクがなかった? “なんとか星”に行ってなかった? “洗脳星”みたいな」(YOSHIKI)、「なんかありそうだね…って、コラッ!」(Toshl)と洗脳騒動を遠慮なくネタ化。漫才のようなトークでじゃれあい、会場は爆笑の渦に包まれた。」

 

【YOSHIKI、壮絶シャウトに苦悶「芯から痛い」 遺書を記した胸中も明かす】

「オリコンニュース」(2017年7月15日 18:57)

 

 

実際のToshlさんの発言は、「46年」ではなく「40年」というアバウトな表現だったようです。

Toshlさんの抗議をYOSHIKIさんが「逆いじめ」と言うのもおかしな話ですが、如何にもという感じですね。

 

余談ですが、「いじめの夜」については「X JAPAN COUNTDOWN GIG 〜初心に帰って〜」(2008年12月31日)でのやり取りを思い出します。

 

(I.V.でToshlさんが何度もYOSHIKIさんを煽り、ドラムを叩かせる)
YOSHIKI:これ、いじめ? 新年からYOSHIKIいじめられてます。10年前の仕返しだそうです(笑)。ドラムを道具のように扱われてます。

Toshl:僕、ボーカルマシンでした。

 

※Toshlさんは「NEWSモーニングJAM」(1996年8月6日放送 テレビ東京系列)で、司会者に「詩も曲もYOSHIKIさんで、歌うのはTOSHIさんじゃないですか。やはり、ちょっとイメージのズレとかがちょっとはあると思うんですけど、その辺はどうやってカバーするんですか?」という質問に、「僕は100%委ねてます。僕はボーカルマシンですから。X JAPANの時は、彼が作ったイメージの世界を僕はただ忠実に表現するだけです」と答えていました。

 

同様のことは、奇跡の夜最終日の会話にも言えますね。

 

(「Toshlのせいで時間がずれる」と話しているYOSHIKIさんの背中を、急に近づいたToshlさんが押してしまう)

YOSHIKI:怖いよ。何、今の? 何? 昔の復讐?

Toshl:昔じゃなくて今の復讐。

YOSHIKI:何、今の?

Toshl:ちょっと距離が遠かったから、ちょっと躓いた。

 

「10年前の仕返しだそうです」「ドラムを道具のように扱われてます」「昔の復讐?」という言葉には、YOSHIKIさんも内心では後ろめたい気持ちがあったことが現れていますね。

しかし、そこで真摯に悔い改めるのではなく、自己弁護や誤魔化しの方向に向かってしまったのでしょう。

 

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「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle 〜奇跡の夜〜 6DAYS」

「横浜アリーナ公演 2日目」(7月15日)

 

YOSHIKI:何事どころじゃないよね。波瀾万丈があって、紆余曲折があって、ちょっと洗脳もあって。昨日何だっけ? Toshlが違う星に10年間行ってたって話をしたの。

Toshl:「水金地火木土天海冥」の後に。

YOSHIKI:洗脳星。

Toshl:「水金地火木土天海冥洗」

YOSHIKI:そうね。笑えるようになったからね。

 

(「Longing」について)

YOSHIKI:覚えてる? LAで俺が最初に聴かせた時に、「YOSHIKIこれ凄えじゃん」って言ったの。

Toshl:あ、本当? 何作っても僕凄いじゃんって言うじゃん。

YOSHIKI:でもあの時は、もっと感情籠ってたのよ。

Toshl:本当に思ったのよ。

YOSHIKI:まだ洗脳星に行く前だったから。

Toshl:まだね、この地球上にまだいたのよ。

 

「笑えるようになった」のは、ToshlさんではなくYOSHIKIさんですよね。

Toshlさんに面倒な配慮をしなくても良くなった、自分が疚しい思いから解放されたのが、嬉しかったのでしょうか。

 

よく「腫れ物に触るような扱いをしなくて済むようになったんだから、いいじゃないか」とYOSHIKIさんを擁護する人がいますが、深刻な犯罪被害について「腫れ物に触るような扱い」をするのは当然でしょう。

 

Toshlさんが自分でネタにしてほしいと頼んだ訳でもありません。

こうした声にも、「気を使わずに済むようになったのは喜ばしいこと=気を使うのは面倒臭い」という本音が窺えますね。

 

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「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle 〜奇跡の夜〜 6DAYS」

「横浜アリーナ公演 3日目」(7月16日)

 

YOSHIKI:Toshlどこ? よく周り見てないと、どこから出て来るか分からないから。Toshlどこ行った? あ、いたいた。またどっか、洗脳星に行っちゃったかと思った。

 

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「Toshl CRYSTAL ROCK チャンネル」(7月16日)

「YOSHIKI緊急出演!XJAPAN LIVE会場から奇跡の生放送!Part3@横浜アリーナ楽屋」

 

YOSHIKI:洗脳星どう?(笑)

Toshl:(苦笑して)何か今回その話題凄いね。

YOSHIKI:でも、自分で言うのも何だけど、俺天才だと思ったその時。

Toshl:何? 何?

YOSHIKI:大阪の時に。

Toshl:うん。

YOSHIKI:急に出てきたの言葉が。別に台本ないじゃん本当に。

Toshl:勿論ないですよ。

YOSHIKI:Toshlどっかに行ってたよね、暫くね、違う国、違う星とか言ってる時に、急に出てきたのよ。この辺(腹部に手をやって)から。

YOSHIKI・Toshl:洗脳星が。

Toshl:出てきた。

YOSHIKI:急に出てきたの洗脳星って。

Toshl:洗脳星が出てきた。

YOSHIKI:それがついつい言葉に出ちゃったの。

Toshl:凄いね。

YOSHIKI:凄いでしょ?

※YOSHIKIさんは勘違いしていたようですが、「洗脳星」の初出は大阪ではなく横アリ初日です。

 

「天王星」「冥王星」と響きが似ていたから、咄嗟に思い浮かんだのでしょう。

Toshlさんはもう大丈夫だと周知するために考え抜かれた計画などではなく、幼児じみた衝動的な発言だったことが分かりますね。

 

その後、前回記事に書いた「「洗脳の件はYOSHIKIとは無関係」「非はない」「それどころか心からToshlを心配し、復活を喜んでいる」という印象を刷り込める」メリットに気付いた可能性はありますが。

 

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「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle 〜奇跡の夜〜 6DAYS」

「横浜アリーナ公演 4日目(最終日)」(7月17日、WOWOW中継有り)

 

Toshl:いつでも僕は、君の背中を押したいと思ってる訳よ。いつも悩んだり苦しんだり、眠れない夜を過ごしてるから。僕は優しく君の後ろから、そっと押してあげたいと。

YOSHIKI:でも何かさ、まあToshlとね、出会ってから、もう僕ら長いんだけど、何か10年くらい違う国に行ってなかった?

Toshl:また、それ……。(苦笑して)

YOSHIKI:国じゃないよね、違う星に行ってた。

Toshl:いや、違う、全然違う星。

YOSHIKI:何ていう星だっけ?

Toshl:よ、よく……。

YOSHIKI:洗脳星?(笑)

Toshl:せん……それだから、新しく入った訳でしょ、水金地火木土天海洗って。

YOSHIKI:あれ、一応太陽系の中にいるの?

Toshl:いるいる。一応ね、あのー、冥王星の代わりに洗脳星っていうのが入った。僕が見つけた。

YOSHIKI:凄い暗いような。

Toshl:凄いよ。「Break the Darkness」みたいな星だよ。

 

YOSHIKI:今回アコースティックってことで、色んな名曲が蘇ったという。

Toshl名曲が蘇った。自分で言ったな今。

YOSHIKI:何聴きたい? 紅、紅さっきやったじゃん。「Crucify My Love」、Toshl覚えてる? 「Crucify My Love」。まだToshlが違う星に行く前の、洗脳星に行く前の曲なんだけど。

Toshl:いやー、もう、あの曲のせいで洗脳星に行ったと思うくらい、苦しいレコーディングだったよ。本当に。

YOSHIKI:過酷だったよね。

Toshl:この時は辛かったね。本当辛かった。でも、あのレコーディングがあったからね、今があると思うよ。どれだけ音楽と戦ったというかね。

YOSHIKI:戦ってるよね。

Toshl:戦って、あそこまで極限までいったレコーディングをやってきたから、僕たちが、僕が違う星に行ってる間も、世界中でね、多くのファンの方が増えていったじゃないですか。

 

Toshlさんは「あのレコーディングがあったからね、今があると思うよ」と言っていますが、これはYOSHIKIさんやX JAPANファンへの配慮であって、そのまま受け止めることはできませんね。

 

また、体罰に遭った人は、成長してから「あれがあったから今の自分がある」と言って、理不尽な仕打ちを肯定してしまうことが珍しくありません。

これは「認知的不協和」の理論で解釈できます。

 

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 認知的不協和とは、相いれない2つの認知を同時に抱えている状態のことを指します。そして、人間はこの不協和を解消するために自らの態度や行動を変容させる傾向があるとされています。

 

 有名なものに、喫煙者の例があります。喫煙者は自分自身が煙草を吸っていると認知しています。しかし、煙草を吸うと健康に害が及ぶことも同時に認知しています。ここでは煙草を吸っていることと健康に害が及ぶことは相いれません。そこで「たとえ煙草を吸ったとしても長生きの人がいる」などと主張することで不協和の状態を緩和するわけです。

 

 このような不協和の解消が体罰を容認する人々にも生じていると考えます。つまり、自分自身が過去に部活動中に体罰を受けたという認知と、体罰には意味がないという認知は相いれません。そこで、体罰を容認するように態度を変容させることでこの不協和の状態を解消しようとするわけです。

 

 もちろん、体罰を否定することも実際には可能ですが、それは過去の自分自身の体験を否定することになるため容易ではありません。スポーツ人類学者の庄形(2018)は、高校のハンドボール部員が体罰を受けていた当時は不快感や恐怖を覚えていたにも関わらず、引退後に「成長」という肯定的意味を付与することで体罰に対する態度を変容させていく過程について論じています。この態度変容の背景には認知的不協和が関係しているのかもしれません。

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簡単に言えば「ジレンマの解消」でしょうか。

 

 Toshlさんは『洗脳』出版時に「ナタリー」のインタビューで、「よく「いろいろと経験したほうがいい」とかっていう話もありますけど、経験しないほうがいいこともたくさんあるんですよ」と言っていましたが。

カルト被害の経験に過剰な価値を見出してしまう人の心情も、認知的不協和で説明できるでしょう。

 

ファンがYOSHIKIさんを庇ってしまう心理についても、認知的不協和が参考になりますね。

カルト脱会の難しさに、今までの自分を否定することになるからという理由がありますが、それも想起します。

 

Toshlさんは『ヘドバン Vol.5』(2014年10月29日発売)で、過去のレコーディングについて

「あのときのストラグルが今につながってるのかなっていう風には思えるし」と言っていますが、

その直前の「当時は自分のキャパも狭かったので、一体いつこのレコーディングは終わるんだろうとか、そんなこと言われても出来ねえよとか、そういう感情になっていくので。そうなるといいものってなかなか出てこない。たまにそこからいいものが生まれる場合もあるんですけど」(p.52)が大事ですね。

 

『Motto2 vol.10』(2015年3月23日発行)でも、

「ソロのレコーディングの場合はスゴくテイク数が少なくて。仮歌がOKテイクになるっていう。ほとんどの場合、いちばん最初に唄ったものが使われるという感じです

 

「というのは、何度も唄っていくと、こなれた歌になって、最初のパッションが薄れるというか。初めて唄う時だけはあんまり何も考えずに唄うんですよ。それが回を重ねるごとにピッチをよくしようとしたり、上手く唄おうと思ったり、小細工をしてしまったり。テイクを聴き比べてみると、最初のほうが勢いあって、フレッシュなパンチ力があっていいな、と結果なるんです。」(p.37)と言っています。

 

実際の仕上がりがどうかは別として、Toshlさんの本心としては、何度も繰り返し歌うレコーディングをベストとしている訳ではないのが分かりますね。

 

現実的には、理不尽なレコーディングがなく他の問題も生じなければ、脱退・解散・洗脳もなく、ブランクなしにX JAPANの活動を続けられたでしょう。

パワハラ・モラハラ的なレコーディングがなければ日本で人気が出ず、インターネットを通して海外に伝わることもなかった、とは言えません。

 

確かにレコーディングのこだわりアピール、解散、HIDEさんの死などによって、「伝説のバンド」と言われるようになった面はあるのでしょう。

YOSHIKIさんによる特別感を煽るようなやり方や演出が、良くも悪くも信者的なファンを生んだとも言えます。

 

しかし、それよりもコンスタントに活動していたほうが、日本での人気も保てて、世界進出にもプラスになったのではないでしょうか。

何よりバンドの成功は、メンバーの犠牲よりも優先されるべきものではありません。

 

絶頂期での解散と言われますが、当時は日本でも観客動員数が減り、人気に陰りが生じていました。

「人気絶頂期での解散」というフレーズは、バンドを停滞させてファン離れを招いたYOSHIKIさんの責任を不透明化するだけでなく、「絶頂期だったX JAPANを解散に追い込んだToshlの罪は重い」という印象を強くさせますね。

 

YOSHIKIさんもカーネギーホール公演(2017年1月13日)で、「La Venus」演奏前に「人気絶頂の真っ只中でバンドは解散しました。ボーカルのToshlが洗脳されてカルトに加わったんです」と説明していました。

 

WOWOW放送時の字幕は「ボーカルのToshlがいろいろと感化されたのです」となっていましたが、YOSHIKIさんの口から出ていたのは「Toshl,vocalist brainwashed and joined cult.」という言葉です。

 

前回記事が参考になりますが、YOSHIKIさんが婉曲的な表現をせずに「brainwash」「洗脳」と言うのは、Toshlさんへの責任転嫁だけでなく、センセーショナルな言葉で興味を惹きたいという狙いもあるのでしょう。

 

被害の深刻さを伝えるために、敢えて直接的な言葉を使うのとは違います。

メンバーの不幸を利用・便乗していると言われても否定できませんね。

 

ここで、「YOSHIKI CHANNEL」(2017年1月25日)の項目で触れた「HYPER JAPAN Festival 2015」でのインタビュー(2015年9月26日 フジテレビNEXT)から引用します。

 

──新しいファンも増え、増殖し続けるのは何故だと思われますか?

 
(略)

YOSHIKI:親子三代で来てくれるファンの方たちもいて、常に新しいサウンドを追求してるってこともあるでしょうし、ジェネレーションを越えて、そうやって音楽が伝わってきてくれてるのかな、みたいな。

やはり、その時代で止まってしまう音楽と、ずっと繋がってく音楽ってあると思うんですけど。

Toshlとも前に喋りましたけど、過去に20年以上前もレコーディングに、凄く、何かね、地獄のようなレコーディングを、もうね、何か血出しながら歌ってなかった?

 

Toshl:(微苦笑しながら頷いて)そうですね。

 

YOSHIKI:流血してる訳じゃないんですけど、何かそういうもう、壮絶なレコーディングを繰り広げてきたんですけど、その甲斐があったというか。

やはり音に妥協しないできたのが、20年前の曲も、そうやって何か、今の方たちに新しい曲のように広まっていってるっていうのが、とても嬉しいことだなって。

楽曲、まあレコーディング頑張った甲斐があって、こういう風になってるんだと思いたいですけどね。

 

「血出しながら歌ってなかった?」は『Jealousy』のレコーディングのことでしょうか。

「すみれ組幻想⑫」には載せていなかったので、『ROCKIN'ON JAPAN vol.51』(1991年8月号)の市川哲史氏のインタビューから、Toshlさんの言葉を載せます。

 

「(略)『ヴォーカル録り出来る時に演っとかなきゃ』と思ってたんだけど、スケジュール上の問題でなかなか演らせて貰えなかったっていうのが本音かなあ」

 

(「──”演らせて貰えなかった”?」)

「(略)順番が回ってこなくて、オケ録り終わって最後に唄入れだから。結局ツケは全部ヴォーカルに回されるなって。だから次回からはちゃんとしようと。唄おうと思えば唄えるじゃないですか。無理矢理唄わせて貰えれば。(略)自分の身体は自分しかわからないから。結局、最後は『ブルー・ブラッド』より酷い状況で終わったわけだから……

 

(「──その過酷な状況なんだけれども、どのくらい続いたんですか。」)

「1カ月ですね。これは口に出すのもおぞましいっていうか。最後は人間技じゃなかったなっていう」

 

(「──具体的にどう過酷だったの?」)

「20時間連続でスタジオに入って、30分ソファーで寝て、また唄って。だから時間の感覚が無くて、唄ってるか少し休んでるか御飯食べてるか(笑)」

 

「でも”スタッブ~”唄ってて喉から血が出た時はさすがに驚いちゃって、レコーディング止めたけど」

 

「暗くなりましたよ。ヴォーカル録りが普通の人より懸かるから。結局ヴォーカル録りの進行が全体を左右してる感じの流れがあったんで、僕が早く終わらせていけば予定通りだったのに

 

1カ月に1回しか射っちゃいけない注射を、3日に1回射っちゃうって状況ですね。もう腫れて喉が完全に塞がって、声帯開いてないんですよ。それを注射で無理矢理こじ開けて声を出すだから身体中ムクんじゃうし、ハイになっちゃうし。何か危なかったですよ最後はもう」

 

「なんですけど、また問題があって──機械がトラブった。結局始まったのは7日のもう夜中遅い時間で。で唄ってたんだけど、さすがに俺の身体にもとうとう限界が来てしまって。鼻血が出て、『あ、これはマズいな』と思ってたら、今度は胃痙攣が始まっちゃって。で、立ってられなくなっちゃったんだけど、でも『演るしかない』って気合い入れて演ってた。でも今度は声がね──低いパートを唄ってたんで出るには出たんですけど、声が震えてしまうんですよ。喋る声も唄う声も。『ああ、もうヤバいな』って思うんだけど、次第に気も遠のいていって。『これが限界なんだな』って初めて知りましたね。人間の身体の限界ってものを。さすがにその時は、ヨシキが『このままじゃトシが死んじゃう!』って止めてくれましたね」

 

「1カ月に1回しか射っちゃいけない注射」とは、ステロイド注射でしょうか。

Toshlさんは「ダウンタウンなう 本音でハシゴ酒」(2016年6月17日フジテレビ系列)に出演した際、注射したのは喉ではなく臀部だったと言ってましたが、いずれにせよ危険でしたね。

 

(番組中、浜田雅功さんが「俺みたいなものでも、全然出えへん言ったら小室(哲哉)さんが、じゃあ喉に注射しよかって喉注」と話すと、Toshlさんは「それは何ですか?合法的に打てるんですか?」と返してましたが、喉への注射を知らなかった訳ではなく受け狙いでしょう)
 

これらのことは、『ヘドバン Vol.30』(X『Jealousy』30周年メモリアル号。2021年6月22日発売)の「津田直士が2万字で激白する壮絶極まる『Jealousy』レコーディング一部始終」には一切出てきませんでしたね。

美化するくらいならスルーのほうがマシかもしれませんが。

 

HYPER JAPANでの「Toshlとも前に喋りましたけど」とは、「ニューヨークビズ!」の高橋克明氏とのインタビュー(「WEEKLY Biz」 2014年10月11日号掲載)のことでしょう。

 

【アメブロ版】

 

この時のToshlさんは、「やっぱりYOSHIKIのやり方は間違ってなかったんだなって感じます」と言っています。
 

しかし、これはYOSHIKIさんへの気遣いと、「ToshIがいたから、この曲が生まれてる。そういう意味でも自分の才能を引き出してくれた人でもあり、友人でもあり、パートナーでもあり、そしてこのX JAPANっていう化け物を作ってしまった人でもあると思うんです。(笑)」という言葉を受けたからでしょう。

 

今このインタビューを読むと、当時のToshlさんはYOSHIKIさんを信じていたのだろうなと思わされます。

また、以前からX JAPANの宣伝はYOSHIKIさんのみか、YOSHIKIさんとToshlさんの2人だけで、他のメンバーの露出は限られていたという点も見逃してはいけませんね。

 

EXTAVでのHEATHさんとPATAさんの扱いの悪さを見ても、そう思います。

(最近の例:EXTAV運営は1月22日のHEATHさん誕生日をスルー。YOSHIKIさんは2月2日、EXTAVのHISASHIさんへのBirthday Tweetを引用リツイートしているので、問題視している様子はなし)

 

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「Toshl CRYSTAL ROCK チャンネル」(7月17日)

「YOSHIKI&HEATH緊急出演!XJAPAN LIVE会場から奇跡の生放送!Part4@ツアー最終日・横浜アリーナ楽屋」

※SUGIZOさん、PATAさんも同席。

 

YOSHIKI:俺たちだけ、1時間。

Toshl:どっか、変な宇宙に行ってたってこと?

YOSHIKI:まあまあ、あのー、冥王星、

(ToshlさんとYOSHIKIさんが、それぞれ指を折って数える)

Toshl:天王星、水金地火木土天海洗。

YOSHIKI:気に入ってるでしょ?

Toshl:いや、気に入ってないよ。そういう風に笑いにするのやめてほしい。

YOSHIKI:気に入ってるでしょ。

Toshl:いやいやいやいやいや。

 

Toshlさんは笑って話を合わせつつも、「気に入ってないよ。そういう風に笑いにするのやめてほしい」と言ってましたね。

まさに中高年男性のセクハラを曖昧な笑いでかわすしかない女性を連想します。

 

後になって抗議すれば、「自分も楽しそうにしてた癖に」 「はっきり拒否しないほうが悪い」 と言われるのがお決まりのパターン。

ファンの間でも、洗脳いじりを批判する人に、「Toshlもノリノリだっただろ」という言葉がぶつけられてましたね。

 

 

 

※「しゃべくり007」(2017年12月4日放送 日本テレビ系列)より引用。

 

私が使用している記事やインタビュー、動画などは、著作権の関係でそのまま紹介していなくても、探せばネット上で見つかるものも多いです。