「そうよ、ねぇ、愛子さん
あなたがそんなにダメなのに
きっと、ものすごく愛してたのよ
やっぱり、そのお金の出どころ
ちゃんと調べるべきだわ」
でも、昇君はぐずぐずしていて
何もしようとはしません
こういう時、すぐにぱっぱと動くのが
澄香さんです
「ねぇ、ちょっと、スマホ持って来て
愛子さんの実家には連絡できるの?」
「あ、えっと、確かLINEに僕も入っていて
お父さんとお母さんもそこのグループLINEで
話せます」
澄香さんは、そのスマホを取り上げて
昇君がおたおたしているうちに
電話しました
すると、優しそうな中年の女の人が出ました
『あら、あら、えっと、昇君だったっけ?
何かあった?愛子は元気かしら?
まだ、バンド活動はやってるの?
田舎では愛子は音楽家の人と付き合ってるとか
噂になっちゃってねぇ
大げさでしょ~
でも、うちの家族も応援してるから、頑張ってねぇ』
なんて人のよさそうな人なんだろう
この人をだますのは心苦しいけれど
そんなことは言ってられません
『あ、お世話になっています
昇の姉です』