澄香さんはレジ打ち３０年と胸を張ってる
川北さんに心の中で
無人レジがこのサバ缶スーパーでも半分
無人レジを使えないお年寄りのために
川北さんたちはいるのです
もう、その老人たちだって来なくなる
川北さんは今、５０歳くらい
これから大変じゃない？！
でも、口には出さずにニコニコしていました
だいたい、川北さんが嫌いなのです
サバ缶スーパーではお客さんも使うトイレがあります
その掃除は各課で一週間で変わる当番制
フィッシュ課は当番に当たった週は
山吉さん、澄香さん、そしてたまに出てくるバイトで
平等に割り振りしています
ほかの課だって、そうです
精肉のマネージャー橋本さんもやってるし
青果のキュウリさんは丁寧に掃除するので
ぴっかぴっかです
それが、レジだけ違うのです
レジの担当の週になると
いつだって、やってるのは村西さん
え？！新人とはいえ、なんで？
レジの女子高生に聞くと
「ああ、あれは川北さんの指示
村西さん、早稲田なのに私なんか恐縮しちゃうんだけど
川北さんが『トイレ掃除なんか台湾人がやればいいのよ』
あ、村西さん、台湾から来てるんですよ
ひどいとは思うけど、川北さんには逆らえない
逆らうと一番忙しい時間のシフトになったり
店長にあることないこと言われて、時給が上がらないし」