「ああ、そうそう、
あの子、あんなに頭よかったっけ?
お父さんが事故で亡くなって
保険金が入ったんだよね
それで、ギリギリ受験間に合ったんだって
学年トップだった保品勇作と同じ高校」
「うちの中学からはその二人だけ行ったんだよなぁ」
「愛子、ノートとか貸してたじゃん
覚えてるでしょ」
覚えてるどころじゃなかった
あのメモは今でも持っている
保品君の『殺す!』って言葉が耳に残っている
高校受験しないって言っていたのに
よくノートを借りていた
それって、どういうこと?
「あそこの父親ってロクな奴じゃなかったんだよなぁ
俺、学校帰りあの家の前を通ってたんだけど
朝から酒飲んで、家族に暴力ふるったり
よく、叫び声とか聞こえてた」
「じゃ、事故で亡くなったのは
夏美にはラッキーなことだったんだね」
愛子さんは気になって
「え?!全然知らなかった
事故って?」
「なんか、朝早くに、
ほら、町のはずれに釣り堀があったでしょ
あそこに落ちたらしいよ
その時もしこたま酒を飲んでたらしくてね」
「それで、夏美は保品君と同じ大学、中央大に行くんだって」