鮎川さんは仕事が早いし
総菜のマネージャーからは重宝がられている
それに休まない
今、29歳だから体力もある
50,60のおばちゃんパートとは違う
鮎川さん自身は29の自分がここで朽ち果てる
そんな恐怖に晒されてはいたけど
他の仕事なんか想像もつかない
「フィッシュ課の澄香さん
あんたと同い年くらいだよねぇ
何でも親友の子供を引き取って
育ててるんだってさ
なんか、大学もすごいし
これまでのキャリアも人がうらやむような
ものだったらしいけど
すべて捨てて、えらいよねぇ」
そんな話をされて、泣きそうになる
鮎川さんは何もない
高校出て、仲の良かった佳苗と東京に出てきた
同じパン工場に就職したけど
佳苗はすぐに水商売に行き
「ねぇ、あんなところでパンを
一日中見て12,3万円
キャバクラなら一日で稼げるよ
おいでよ~」