妹からは電話が来ました

もちろん家電なんですが

この家はそんな電話が鳴るのも何年振りかって

井川さんは電話のなったことに驚きました

 

「お母さん、手紙読んだわよ!

今頃何言ってるの?

それって、同じ中学に通ってた

近所の祥子ちゃんの事でしょ

あの頃、私は小学生で

祥子ちゃんって臭くもないお兄ちゃんを

朝から『臭い、臭い』って言ってたんだよ

ほら、お兄ちゃんと私と祥子ちゃんの三人で

学校行ってたでしょ

でも、今、思えば

祥子ちゃん、たぶん、お兄ちゃんのこと好きだったんだよ

気を引きたかったんだねぇ

で、お兄ちゃんはそれを本気にしちゃったわけ」

 

え!え!そんなこと?

そんなことでひきこもっちゃったの?

 

「一度ひきこもると、それからあとは

色々考えちゃったりで

そんなことになっちゃったのよ

いい身分よねぇ

一回も働かないで、ご飯食べさせてもらって!

お母さんの後、私が面倒は見ませんからね!」

 

そう言って、電話は切れてしまいました

愕然とした井川さんは

サバ缶スーパーに行くと

そのことを恥ずかしそうに話しました

麻生店長は

 

「引きこもりのきっかけなんかそんなものだよ

もう、人生が、そうなっちゃってるんだから

出てくるのは無理かもなぁ」