「ねえ、お願いがあるんですけど

この、アジなんですけど

三枚におろして、骨を全部抜いてもらえますか?」

 

品物を出している、あかねちゃんは

その高校生に声をかけられて、困ってしまいました

 

「えっと、すみません

私は魚おろせないんです

ちょっと、待ってもらえますか?」

 

そう言って、店長を呼びました

大野店長はフィッシュ課出身です

マグロだって、この細い体で捌けちゃいます

 

大野店長がおろしている間

 

「すみません、ちょっと、待ってくださいね」

 

そう言いに行くと

 

「魚コーナーで働いているのに

おろせないんですか?」

 

「ごめんなさい。私高校生で、バイトなんです

いつもお買い物してるけど

自分で食事作ってるの?」

 

すると、嫌そうにあかねちゃんを見て

 

「ため口辞めてください!

僕、お客ですよ

魚コーナーでバイトしてるのなら

おろすのくらい覚えたほうがいいですよ

僕はおろせるけれど、明日から中間テストで

忙しいから、今日は頼もうと思ったんです」

 

あかねちゃんは自分のことを『僕』という男子に

初めて会いました