でも、でもでもですね
この幸せな日々は三年くらいでしたよ
家事なんかちっとっもできない私に
毎日一緒に起きて
「さあ、一番にすることは鰹節を削ることよ!」
鰹節が何かも知らなかった私は、削ることから覚えた
どんなことも基礎の基礎から丁寧にゆっくり教えてもらって
卓郎さんに、美味しいお弁当を作れるようになった頃に
卓郎さんは研究中の事故で逝ってしまった
それも助手の人のミスで・・・・・。
お義母さんは気丈で泣くこともせず、私がグズグズ泣いてばっかりで
何にもできなくなっていた時も、しっかりお葬式を取り仕切ってくれた
でも、私の涙が乾いたころ
お義母さんは寝床から起きれなくなってしまった
私はそれまで、自分の悲しみでいっぱい過ぎて
お義母さんのことなんてすっかり忘れていたのに
お義母さんは私が何とか生活できるまで、頑張ってくれたんだろう
二人きりの生活
お義母さんが動けない生活
お互いに優しく想い合っているのに
なかなか、うまく一日が終わらない
ぜ~んぶ、私のせいなのはわかってる
気持ちはお義母さんのために頑張ろうって思っているのに
な~んにもうまくできない
それでも、お義母さんは愚痴ひとつ言わなかった
普通ならホントの娘でもないんだから
出て行って!って言われても仕方ないくらいのダメダメ人間の私
お義母さんはたくさんの知識を持っている人なのに
元気なときだって、絶対に感情をあらわにして怒ったりしない
いつだってニコニコ待っててくれる
目から鼻に抜けるような頭の切れると評判だった卓郎さんが
一見、本当にのんびり屋で少し抜けてるようにさえ見えたのは
お義母さんのそんなとこの影響かもしれない
誰も、ほんの少しでも傷つけたくない・・・そんな気持ちでいっぱいの親子なのだ
それは、すっごくわかっているのに、ほんとに愚図でのろまな私は
できないだけでなく、自分自身がにイライラしてパニックになったりする
そんな時、お義母さんはにっこり笑って
『今日はうなぎにしましょ!』
そう優しくいってくれる
鰻のかば焼きは私の大好物だから!
