値段をつけるのに商品の検索番号ってやつがあって
それを探して打ち込まなきゃいけないんだけど
俺なんかだとだいたい商品と番号は暗記しているんだが
入ったばかりの須田さんにはちんぷんかんぷんみたいで
「ブリの造りだったら探してみて?589でしょ?その番号を打ち込んで
産地、値段と決めるんだよ」
そう、説明するとなんとかやり方の手順は覚えるが
「589って言うと、あ、ヴィヴァルディのグローリア、ニ長調と同じ番号だわ」
とかわけわかんないことをつぶやく
マネージャーの山谷さんはそんな須田さんにイライラしてるみたいだが
まあ、少しずつ仕事は覚えていってるし、リアクションがちょっと変わってて
俺としては面白い!
結構、なんやかんやと続いてるから、山谷さんを須田さんが嫌いにならなきゃ
一か月くらいは持つかもしれない
だいたい、おばちゃんのパートは山谷さんのことを『大嫌い!』そう言ってやめていくのだ
俺だって同じ理由で辞めてはみたいけど
まあ、そんなわけにもいかない
そんなことより俺の楽しみはここフィッシュ課には何一つないのだ
火曜日の三時になった!
バイトのレジの岡谷沙良様が来る時間だ
彼女はレジに入る前に必ず魚売り場をチェックする
今日帰りに買って帰る魚を物色するのだ
魚を物色なんて言うとおばさんのパート、、若くても主婦のパートって思うかもしれないが
それが美人の女子大生なんだよ~
上戸彩と石原さとみを足して二で割ったような
もう、完璧俺好み
ソロソロ、三時だ
山谷さんのネチネチの嫌がらせとしか思えない注意に捕まらないように
さっさとポップ作りに事務所に行くふりをして
須田さんには適当な仕事を振っておいて
俺はあわてて、売り場の商品整理に飛び出す