第七章 人間

山に冷たい風が吹き込んできた

もうすぐ冬が来る

チビはクロにしがみついて言った

「ケンがいない冬は寒いだろうね」

「クロ、毛布って知ってる?ケンが言っていたとても温かい物なんだって」

「ケンと同じくらいかな」

「ねぇチビクロ、早く来て」

「どうしたんだリサ」

「人間が来たわよ、しかもたくさん」

「たくさん」

「そう、あっ!カメラだわ、懐かしいわ」

「カメラ?リサ、危ないよ、あぁリサ」

リサは嬉しそうに、人間の近くに駆け寄った

「私を撮って、私を見て」

チビとクロは茫然としました

「なぁチビ、リサのあんなうれしそうな姿、初めて見たね」

「今日の人間はいつもと違うね」

いつもは餌を持ってくるおじさんと

犬を捨てに来る人間しか見たことがなかったし

リサの行動が変だった

「行かないで、私を連れて行って」

リサが泣き出した

「どうしたんだい、リサ」

「あの人

優しい目で見てくれた

優しい声で呼んでくれた

頭を頭を撫でてくれたの」

チビはケンが話していたことを思い出した

「チビよ人間の手は時々

お日様のようにあたたかくて

頭を撫でられるととても

幸せな気持ちになるんじゃ」

「ねぇクロ、人間って何だろう」

「わからないよ、ただリサには

人間が必要なんだろうな」

そう言ったクロはリサの側に行って

優しく舐めてあげた

それからしばらく山は騒がしくなった

ケガをしている犬が車に乗せられて出て行った

そしてリサも車に乗った

「クロ、リサが行っちゃうよ」

「仕方がないよリサはここでは笑えないんだから」

「うん、リサは人間といる時が一番幸せそうだね」

チビとクロは物陰に隠れてリサを見送りました

二匹で迎える初めての夜でした

 

あとがき

絵がうまく書けないので

実際の写真を転用させていただきました

山梨県・犬の多頭飼育問題 (fc2.com)

犬の目線から書いた話なので

イメージです

でもこの問題に関わった方々の

優しい思いと勇気、継続には

ただ感謝です

今更、書き起こしている私ですが

このことを忘れないために

後少し頑張って書きあげたいと思います